■日本手話通訳士協会 第3回 山梨会場 一泊研修会 参加報告■

(その2)

1.日程

2.参加状況

3.講座内容−講義1「対人援助としての手話通訳」−林智樹さん

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4.講座内容−講義2「政見放送手話通訳における専門性」−山田京子さん

 2つ目の講義は、日本手話通訳士協会理事の山田京子さんの政見放送手話通訳についてのお話しでした。
 パワーポイントで作成したレジュメをスクリーンに投影しながら、非常に良く整理されたお話しの内容でした。また、投影されているパワーポイントの画面をそのまま縮小印刷した資料と政見放送手話通訳に関係する様々な資料を集めた別冊も配布され、受講生に対する細やかな配慮も感じられる講義でした。
(1)もくじ
 1. はじめに (1)自己紹介
(2)理論の重要性
 2. 日本国憲法と政治 (1)日本国憲法とその歴史
(2)参政権と基本的人権
(3)日本の政治
 3. 聴覚障害者の参政権保障運動 (1)参政権保障運動の歴史
(2)政見放送の現状
 4. 先見放送手話通訳理論 (1)選挙情報の重要性
(2)投票者間の公平
(3)候補者間の公平
(4)政見放送手話通訳理論のまとめ
 5. おわりに
(2)別冊資料のもくじ
 この別冊もくじを見ただけでも、いかに丁寧に準備された講義だったかがおわかりいただけると思います。
 1. 世界人権宣言(抜粋) 第1条、第21条
国際人権B規約 「市民的及び政治的権利に間する国際規約」(抜粋)
第25条、第26条
 2. 日本国憲法(抜粋) 前文、第1条、第14条、第15条
 3. 公職選挙法(抜粋) 第150条
 4. 政見放送の種類とNHKの収録場所 選挙種別ごとの政見放送の収録場所
手話が伝わる3つの条件
3分間の通訳種類別手話単語数 政見放送、講演、街頭演説、ニュースのそれぞれ3分間に話される単語数を比較
 5. 選挙情報の重要性【図】
 6. 山田京子「政見放送における手話通訳」
 はじめに
 今日までの経過
 政見放送手話通訳の実際
 政見放送手話通訳実技演習


参政権保障運動の歴史

政見放送研究会報告(H6.6.20)
 7. 山田京子「政見放送における手話通訳」
 はじめに
 手話通訳挿入政見放送実施へ至る経過
 日本手話通訳士協会の役割
 研修
 サブ体制
 任意性という壁

 おわりに
聴覚障害者の参政権保障の一翼を担って
(全通研研究誌77号掲載文)
 8. 依頼から収録までの流れ
 9. 収録状況
10. 参議院比例代表選挙政見放送での取り組み
11. 政見放送アンケート集計表 政見放送手話通訳を担当した士13名が回答したアンケートの結果
12. 都道府県別収録数と士の人数
(参議院選挙区・衆議院小選挙区)
要望書(総務省宛)
士協会「翼」120号「選挙のページ番外編」掲載
13. 要望書(各政党宛)
14. 3団体共同アピール
朝日新聞投稿記事「立会演説会の全廃は困る」(森本行雄氏)
選挙運動の手話通訳を担う皆さんへ
15. 実技演習
 「過去の研修成果と今後の課題から」
 ・共通の課題
 ・対談方式の課題
 ・複数方式の課題
2001年7月の研修会での資料
16. 手話通訳士倫理綱領
政見放送にかかる手話通訳士の倫理綱領
政見放送の手話通訳にかかる日本手話通訳士協会の基本的立場
1997年5月4日
1995年5月5日
1995年5月5日
17. 政見放送の手話通訳に関する細則 1995年5月5日
18. 新しい手話〈政見放送編〉 「日本聴力障害者新聞」2001.7月号
19. 政見放送のご案内 NHK配布資料
〈第19回参議院比例代表選挙〉
20. 参議院比例代表選出議員選挙における政見放送への手話通訳の導入について
制度の概要
(出典が記載されていませんが、役所の資料のようです。)
21. 政見放送の仕組み
 1.公職選挙法における位置づけ
 2.政見放送を行う選挙
 3.政見放送への手話通訳導入
 4.その他
(旧自治省選挙部管理課)
22. 参政権が保障されるその日のために 「全通研東京支部ニュース1998.7月号」
山田京子
23. 都道府県別の収録数 (参議院選挙区・衆議院小選挙区)都道府県別収録数と手話通訳士数
(3)講義内容
〔1〕はじめに
 山田さんは、最初に「そもそもなぜ理論の勉強が必要なのか?」という問題提起から入られた。これは、林先生のお話と同じスタンスだ。山田さんも、手話通訳士にとって日常的な勉強が不可欠なのだということを情熱を持って語ってくださった。
 その「理論の重要性」を示すのが下の図です。
・・ ・・ 時事単語の表現統一が必要 ・・ ・・
・・ ↓↑ ・・
・・ 候補者間の公平を守ることが必要 ・・
↓↑
国民はみな平等で公平
 〈1〉理論は、実践技術のバックボーンになる、〈2〉実践技術だけでは全てをカバーできない、だから理論学習が必要なのだ、と話された。
 手を動かすだけではダメなのだ、キチンとした理論学習に裏付けられた理念を持った手話通訳士になって欲しい、との思いがビシバシ伝わってきた。
 特に政見放送においては、憲法に保障された「国民主権」に立って、「候補者間の公平性」を守る、というスタンスから自然と「時事単語の表現統一が必要だ」という手話通訳実践が導かれてくる、と指摘された。
 逆に言うと、どのような手話通訳をするのかという実践にあたっては、「候補者間の公平」というポイントを踏まえて考える必要があり、なぜ公平が必要なのかといえば、「憲法に保障された国民主権」というしっかりした土台(理論)に立って考えることが大切だとのお話しだったように思う。
〔2〕日本の憲法と政治
 僕は、お話しを聞いて、「確かに参政権の問題って、憲法にまで立ち戻って考えなければいけない問題なんだなあ〜」と認識を新たにしました。
 「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」って、言葉が憲法前文の一番最初に書かれている意義って、重いのですね。
 また、1948年の世界人権宣言 第21条の言葉や、1966年の国際人権B規約などを参照しながら丁寧に「参政権」の土台となる理念を説明してくださいました。
国際人権規約「市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)」
第25条  すべての市民は、第二条に規定するいかなる差別もなく、かつ、不合理な制限なしに、次のことを行う権利及び機会を有する。
(a) 直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること
(b) 普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙されること。
(c) 一般的な平等条件の下で自国の公務に携わること。
第26条  すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。
 ※国際人権規約の詳細は、外務省のホームページをご覧ください。
 ※また、大阪府企画調整部人権室のホームページには易しい解説があります。
〔3〕聴覚障害者の参政権保障運動
 次には、参政権保障運動の歴史についてお話しがありました。最初に基本理念があり次に歴史的経過をチェックするという講義の流れはとても分かりやすいものだと思いました。
 1967年 立会演説会に初めて手話通訳がつく
 1971年 立会演説会における手話通訳が公費負担となる
 1983年 公職選挙法改正(立会演説会制度が廃止となる)
 ここまでが、参政権保障運動の最初の区切りだと思います。立会演説会が廃止された当時僕は大学生で公職選挙法の「改悪」だとして、すごく危機感を覚えました。選挙運動が厳しく規制されるようになり、自由な選挙運動がどんどん制限される世の中になっていきました。そこには、選挙について「できるだけ国民に知らせないようにする」という意図が感じられました。諸外国では選挙運動のオープン化・自由化という流れにあったにもかかわらず日本は規制強化に向かったのです。
 1986年 昭和61年7月6日投票の参議院選挙東京選挙区に聴覚障害者W氏が立候補。テレビ政見放送では手話のみ、ラジオでは「無言の政見放送」となった。

参考資料「政見放送に手話通訳が一部導入されて以降、今日までの経過
作成;日本手話通訳士協会 山田京子理事

5.第2日目 技術講座「政見放送手話通訳実践技術」−山田京子さん

【制作中】

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