2003年度谷和原村手話奉仕員フォローアップ研修会・カリキュラム(案)

1.昨年度(基礎課程)の指導目標

<2002年度の指導ポイント>
(1)目標は「日常会話」ができること。(奉仕員養成は手話通訳を目指すものではない)
(2)その「日常会話」は、谷和原村における身近な「日常会話」を用いなければ「使えない」手話で終わってしまう。
(3)そこで受講生自身に、会話例文(場面設定・セリフ)を創作してもらいつつ、奉仕員基礎カリキュラムにある基本文法等の習得を目指したい。
(4)また、具体的な指導方法としては、<講師からの質問に答え><ろう講師と実際に会話する>中で必要とする単語や表現、文法を身につけていきたい。
(5)そのため、昨年度以上に「声なし」での学習を基本に、手話にどっぷりつかる2時間を作っていきたい。

2.今年度の指導目標

(1)手話奉仕員として必要な手話コミュニケーション力を身につけること
(2)聴覚障害者に関わる知識を学び、視野を広げること
(3)手話奉仕員としての具体的活動を実際に企画・実施してみること

3.具体的な講座カリキュラムのアウトライン(概要)

(1)手話コミュニケーション力を養うために
「ゲーム型ロールプレイング学習法」(谷和原方式・yawara-method)
<解説1;ゲーム型とは?>
これまでの手話学習では、二人一組になって練習するということはありましたが、この谷和原方式の特徴は、2対2の対戦型会話学習法になっていることです。
すなわち1チーム2名(例;Aチーム=山さんと、谷さん、Bチーム=北さんと、南さん)のグループを作って、会話練習を行う場合は、そのどちらかがそのグループの代表として、ロールプレイングに参戦する(例;山さんVS北さん)のです。そしてシチュエーションだけを与えられた会話練習場(例;ファミレスで聴者の山さんがろうの北さんにばったり会った)で、相手のチームの代表者と会話バトルを繰り広げるのです。
相手のいうことが分からなかったり、自分の言いたいことの手話表現が分からなくなった時には、ペアの人に教えてもらうことができます。二人で相談して、相手のせりふに対する返事を考えて、相手に言い返してやるわけです。
もちろん全て「声なし」で対戦します。「筆談」は認めますが、できれば対戦者4名は耳栓などして会話するとより高い効果が得られると思います。
<解説2;ロールプレイングとは?>
ロールプレイングというのは、辞書的には「現実に似せた場面で、ある役割を模擬的に演じること。カウンセリングなどの学習の手段や、心理療法の治療技法として用いられる。」(infoseek国語辞典)というやつです。手話通訳の学習でもしばしば用いられていると思いますが、谷和原フォローアップ研修(以下「Fu研修」と略します)では、とりあえずは、1対1での会話場面を想定しています。
奉仕員の役割とは何かを考えたときに「日常会話以上、手話通訳以下」という訳の分からない定義になってしまうと思うのですが、あまり深く考えても仕方ないので、とりあえずは「手話コミュニケーション力の向上」つまり自分がろう者に街で出会ったときに楽しく会話できるようにしよう、ということを目標レベルにしてみようと考えています。
入門、基礎と全日ろう連のテキストに沿って学習してきましたので、今年は「自分たちでテキストを作ってみよう」というスタンスで、このロールプレイングに取り組みたいと考えています。
1.実際に受講生がやった会話を例文化する。谷和原村でどんな場所での会話が考えられるかを受講生にも一緒に考えてもらい、また会話の自然さをチェックしたり、単語などのバリエーションを増やす作業を通して「谷和原会話例文集」(テキスト化)を作っていく。
2.さらにはそれらのビデオ化を目指したい。手話学習はやはり視覚的な教材が不可欠ですので、受講生と地元ろう者が役者さんになってビデオ作成をしてみたいと考えています。谷和原村内のろう者は数名しかいないのですが、お隣の守谷市や水海道市などのろう者の協力を得て、そんな活動もできると楽しいと思います。それらをさらには、第2弾では小中学校用とか公的機関窓口会話版とかの手話学習教材にしていけたら良いのではないでしょうか。今はビデオカメラを持っている家庭も多いですし、パソコンの性能もアップしてビデオ編集機能も優れたものが出てきていますので、まんざら可能性がない話でもないと思っています。
(2)聴覚障害者問題に対する視野を広げる
ろうあ者福祉の前進は、逆に日常的なろうあ者問題を見えにくくさせています。今ろう者がどのような課題に直面しているのか、茨城県下のろうあ運動はどのようなことを目指しているのかをキチンと学ぶ必要があると思います。そして学んだものを単なる知識として終わらせるのではなく、地域社会の啓蒙につなげていければ良いと考えています。
とりあえず今考えているのは、「日本聴力障害新聞」と「やすらぎ新聞」の記事紹介です。将来的には購読者が出てくることを期待したいですが、毎月講座の中で少しずつ新聞記事スクラップのように受講生に「聴覚障害問題NOW(今、一番ホットな聴覚障害関係記事)」を紹介していきたいたいと思っています。
そして、これは受講生との相談なのですが、例えば2週目に学習した記事を4週目にFu講座の受講生2名が、入門クラスに行って講座の最後に発表する、なんてこともやれないだろうかと考えています。これが「啓蒙活動」です。将来的には「谷和原Fu・手話ニュース新聞」みたいなものを受講生が作成して谷和原村の公的機関に置かせてもらうなんて活動ができたらおもしろいと思いますが…。
(3)手話奉仕員としての活動の実践
手話奉仕員とはいったい何者なのか?というのは、おそらく全国どこでも困っている、悩んでいる課題なのではないでしょうか。手話「通訳」活動は、手話「通訳」者が担うもの。では手話「奉仕」員は「○○」活動を担うものという、この「○○」は具体的になんなのでしょうか? とりあえず今年度は受講生みんなにこの課題について考えていってもらおうと思っています。先日第1回講座の時に議論した中で出てきたのは、「手話歌を練習して地域で発表してみよう」というものです。ターゲットは小中学校と老人ホームの2つのアイデアが出されました。
受講生の議論の中では「手話歌でいいのか?否定的なろう者も多い」との意見も出されました。それでも「地域の中で私たちに今すぐできること」となると、現実的にはなかなか難しいことが多いのです。小中学校での手話指導のニーズは高まっていますが、「手話指導」は果たして「奉仕員」のテリトリ(守備範囲)なのかと考えてみると、やはり「県登録手話通訳」資格保持者にお願いするという方針があると思います。
結局、「手話通訳」でもない「手話指導」でもない「手話奉仕員」活動とは、地域への啓蒙活動が中心になるのかなぁ〜と考えています。個人的には、ろう重複施設建設運動など、ろうあ運動の協力者としての活動というのが「手話奉仕員」なのかなと考えていますが、それは茨城県のろうあ運動が地域手話講習会や手話奉仕員に何を期待しているかということと裏表の課題だと感じています。残念ながら今のところ「手話通訳者」に対する期待の大きさに比べて、「手話奉仕員」に求めるものは県ろうあ運動の中でも漠然としているのではないかと思うのですが、どうなんでしょうか。

4.担当割

Fu研修では、ボランタリーな活動における「自主性」ということについても、受講生に考え、体験していってもらいたいので、受講生一人一人に一定の役割をもってもらうことにしました。
具体的には、各2名ずつの担当をお願いし、全員が何らかの担当を持っていただきことにしました。
 (1)進行;話し合いの時の司会役
 (2)連絡;緊急の連絡などをEメールや携帯メール、あるいはFAXでやってもらいます。
 (3)記録;話し合ったことや参加者の記録なども受講生にお任せします。
 (4)会計;物品は谷和原村社協が負担してくれますので、お金を使うことは基本的にありませんが、交流会のお菓子代とか集めるときのことを想定して会計も決めておきたいと思います。
 (5)資料;主にコピー係です。私が用意した資料などを社協のコピー機で受講生分コピーしていただき、プラス記録係にも1部保存用に渡してもらいます。
 (6)ビデオ;機材は村社協が用意してくれますので、それを時間前に組み立てることと終了後片づける役です。希望者がいませんでした。皆さんOA機器は苦手なので…とのこと。手話学習はある程度ビデオ機材などを使いこなすことも求められるので、今後少しずつみんなに慣れていってもらおうかなと考えています。
 (7)交流;やってくださいとお願いしている訳ではないのですが、まっ、たまには交流も必要かなと思うので、担当をお願いしました。

5.講座時間割

時間 内容 メモ
19:00 手話ビデオの読み取り 今年は、とにかく「読み取り」をもっとじっくりやってみようと考えています。とりあえず基礎テキスト付属のビデオを毎回冒頭にじっくり読み取って、シャドウイングして、意味を考えてもらおうと考えています。
地域のろう者のビデオ作りができるとそれを教材にするのが一番いいのですが、なかなかすぐには実現できないと思うので、まずは既存のビデオを使います。
19:30 ゲーム型ロールプレイングによる会話練習 毎回、シチュエーションを決めて、その日の当番の2チームに「演技」してもらい、それをその日の教材にしようと考えています。
いきなり当日に教材を決めるのはやや無理があるかなとも思うのですが、例えば木下なりの「会話例」を別に作っておくことにして(これは自作自演なので、一人で落語のようにやってみせようかなと考えています。)、とりあえずは受講生の会話バトルをみんなで楽しみながら手話表現を理解していってはどうかと考えています。
20:30 日聴紙などの紹介 盛りだくさん過ぎるかとも思いますが、頑張って日聴紙ややすらぎ新聞(県ろうあ協会の機関誌)を読んでいきたいと考えています。
20:45 受講生の話し合いの時間 地域での手話奉仕員活動を進めていく上ではやはり「話し合い」の時間が不可欠だと思います。わずか2時間の講座に話し合いの時間を含めるのは無謀とも思うのですが、谷和原には手話サークルが昼間しかなく、お仕事をされている受講生が集まれるのはこの時間しかないので、あえて15分を受講生にお任せしようと考えています。

5.講座カリキュラム(案)

日時 内容 テーマ
第2回
06/13金
ビデオ読み取り 「手話教室−基礎」(全日本ろうあ連盟)
第6講座 基本文法−主語の明確化2
会話練習 シーン1 「バス旅行のお誘い」
ろうあ問題 日聴紙6月号より
話し合い 手話歌について(つづき)
第3回
06/26木
ビデオ読み取り 「手話教室−基礎」(全日本ろうあ連盟)
第7講座 基本文法−主語の明確化3
「指さしを使って表現しましょう」
会話練習 シーン1 「バス旅行のお誘い」
ろうあ問題 「ろう教育の”明日”」より
話し合い 手話歌「世界に一つだけの花」(SMAP)の練習その1
日時 内容 テーマ
第4回
07/24木
1.ビデオ読み取り 「手話教室−基礎」(全日本ろうあ連盟)
第8講座 基本文法−主語の明確化4「体の向きを変えて表現しましょう」
2.会話練習 シーン2;「先日、こんなことがあった」という話を相手に伝える。
3.ろうあ問題 書籍「ぼくたちの言葉を奪わないで!〜ろう児の人権宣言〜」の紹介
4.話し合い 手話歌について?

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