茨城県手話通訳者指導者養成講座(第3回)
8月31日(土)やすらぎで指導者養成講座があった。
第3回のお題目は、「手話の知識・日本語の知識」
Q1;地域の手話通訳者を養成するにあたって、指導者に求められる「手話の知識・日本語の知識」とはいったいどんなことでしょうか?
<手話の知識>
「基礎からの手話学」 神田和幸・藤野信行編著 福村出版2000円 |
1996年6月初版発行。・・・ちょっと古いか?それに神田さんは手話検定おっ始めてしまって最近アウトローになってるしなぁ〜。 第1章 手話学の前提 第2章 手話のしくみ・・・これだ! 1 音韻論 2 形態論 3 統語論・・・ダメだ、オレにはワカラン(>_<) |
「実感的 手話文法試論」 松本晶行 全日ろう連2500円 |
手話研究所の「手話コミュニケーション研究」の連載された松本さんの文法論。 非常に乱暴な言い方ですが、木村晴美さんや市田さん達「D−pro系」の手話文法論に「対抗して」書かれた「全日ろう連系文法論」ではないかと木下は受け止めています。 これもあくまでも木下個人の見解ですが、もくじを見ても分かるように「品詞分類」的文法論なのです。これは、従来からの「単語レベルの手話指導」の正当性を主張するために書かれたのではないかと、木下は勘ぐっています。(ホント暴言だなぁ〜) でも、今、必要なのは、(専門用語は分からないけれど)手話文の構造みたいなものではないかと木下は思うのです。 例えば「格の変化」や「語順」といった課題です。 あるいは、「指さし」や「まゆげやあごの動き」がどういう文法的な役割を果たしているのか?僕はさらに「間合い」や「手話のスピード」が重要な意味を持っているように漠然と考えているのですが・・・。 |
「手話・日本語大辞典」 竹村茂 廣済堂出版3800円 |
手話の辞書と言えば全日ろう連の「日本語・手話辞典」が王道ですが、私はあえてこの「手話・日本語大辞典」を推したいと思います。 「手話から引く」という発想に立った唯一の辞書です。 手話学習あるいは手話指導がなかなか深化しない原因は、文法論の未整理もさることながら辞書がない、あっても使い物にならないことが大きいと思うのです。 谷和原村の講習会では、今年、受講生のほぼ全員がこの辞書を買ってくれました。確かに「書かれた手話を見て覚えるなんて・・」という批判もあるでしょうが、僕は、言葉の学習に辞書がないなんて方がよっぽどナンセンスと考えています。 |
手話コミュニケーション研究 日本手話研究所800円 年4回発行 |
日本における第一線の手話研究の「成果」に出会うことができます。 手話指導を志す者は「必読の書」になるのではないかと思っているのですが、僕自身なかなかキチンと読む時間が取れずにいます。 松本さんの「実感的 手話文法試論」もこの所報から出てますし、今度は、高田さんの手話論や鳥越さんのバイリンガル教育の本もシリーズで刊行されるようです。 <手話の知識>も、こうした地道な研究の積み重ねの上に、やがて全体像が明らかになり、それが、さらに僕らのような地場の指導者にも分かりやすい形で降りてくる日も近いように感じます。 それにしても僕の場合「積ん読」を何とかせんとな・・・。 |
手話の基礎知識については、午後の馬場さんの講義を紹介する中で、また書いていきたいと思います。
<日本語の知識>
「手話のための言語学の常識」 鈴木康之 全日ろう連2500円 |
まずもって、読破しなければならないのは、この本でしょう。(そう言いつつ読んでないんだけど…) 鈴木先生は不思議な先生です。士養成講座でも2年前(12年度)に講演いただいたのですが、あれやこれやと話が脱線してどうもよく分からなかったという印象が残っています。 これが試験対策じゃなかったら面白く聞けたんだろうなぁ〜という先生ですが、この本は近いうちに必ずキチンと読まなきゃね。 |
「外国語としての日本語−その教え方・学び方」 佐々木瑞枝 講談社現代新書660円 |
この本は副題にもあるように外国から日本に来ている留学生向けに日本語を教えている先生が書いた日本語文法解説書+指導書なのです。 「日本語ってこういうもので」「留学生に対してはこんなことに気をつけて教えたらいい」ということが丁寧に書いてあるのです。僕ら手話を教える者にとっても大変勉強になるポイントがたくさんあります。 手に入りにくい?(1994年2月発行)かもしれませんが、木下のイチオシの本です。 |
「日本語練習帳」 大野晋 岩波新書660円 |
私はへそ曲がりなのでベストセラーのたぐいはほとんど読まないのですが、水海道市(隣町)のブックオフで半額だったので買いました。 素直に「お薦めです」、通訳者養成でもこれを課題図書にしてレポートを出してもらうことにしようかな? 1.単語に敏感になろう 2.文法なんか嫌い 3.二つの心得 4.文章の骨格 5.敬語の基本 |
社会福祉用語辞典第2版 山縣文治・柏女霊峰 ミネルヴァ書房2200円 |
<日本語の基礎知識>ではなく、<社会福祉の基礎知識>ですが、”語彙を増やす”という視点からお薦めしたいと思います。 前は中央法規のを持っていたのですが、新しい用語の解説がミネルヴァの方が丁寧な気がしてこちらを買いました。 講師に求められる知識として、日本語ばかりでなく日常的に用いる福祉用語についてもキチンとその意味を理解しておくことは大切だと思います。 これに「福祉小六法/大阪ボランティア協会編」(中央法規1000円)安い!を組み合わせればバッチリです。 |
こんな感じで私なりに第3回指導者養成講座<手話と日本語の基礎知識>への心がまえをして水戸に向かったのです。
<午前中カリキュラム>
今回は、水戸会場の講師団がスタッフの順番だったのですが、黒板にはなぜか「テーマ;日本語から手話への翻訳−講師 馬場 傑氏(手話通訳士)」と書かれていました。
その上、その馬場さんは「ついこの間突然講師依頼を受けて・・」と弁解+α「午前中は士養成講座の講師会議があるから、皆さんは自習しててください。」とのこと。どこかの公立学校の教師のような・・・。
私も前回(第2回指導者養成講座)、ほとんどぶっつけ本番状態で午後を担当した(が決まっていた)ので、「お気持ちは十分お察しします。」
<自習課題>
○「基本テキスト第11自己紹介・12修学旅行説明会・13大震災被災者挨拶、及び応用テキスト第8政見放送の学習会・9生活習慣病について」の日本文を読んで、手話表現を考えてみて下さい。
私たちは3グループに分かれて、プリントの日本文の「日本語で手話の訳をつけていく作業」をしました。こんな感じ。
<今/紹介/名前/高橋/言う>
まあ、私も前回、ほとんど準備らしい準備ができなかったから偉そうなことは言えませんが、水戸のスタッフの皆さん、「自習」はないんじゃないのぉ〜?
一応、各グループで話し合うことにはなってて、第1グループの回答というか、発表だけはしたけど、ありゃ「指導者養成」とはとても言えない代物でしたよ。
やっぱり「指導者養成」は、どんな目的(趣旨)で行うのか?を突き詰めて考えてカリキュラムを組まなければいけないと思います。
午後の馬場さんの「日本語−日本手話間の翻訳技術」は大いに勉強になっただけに、午前中も、馬場さん任せにするのでなく、「指導者養成にとって、手話や日本語の基礎知識をどんな風に勉強したらいいだろうか?」というテーマでグループに分かれて討議し、それを発表し合うだけでも良かったのではないでしょうか。
今回は、以前に決めた担当者が二人ほど欠席で、それでピンチヒッターの方が急遽やりくりしていたように見受けられましたが、まがりなりにも「指導者養成」というのに、県ろう協の役員始め、通協等の協力体制はどのようになっていたのでしょうか? 今、求められているのは人材より前に「理念(信念かな?)と熱意」だと僕は思うのですが。
私のグループは、応用テキスト第9回の「生活習慣病についての講演」を翻訳しました。
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