2002年度茨城県手話通訳者養成講座2(応用・実践)  <講義第3回>

2002.12.14(土)13:30〜16:00

本日の講演会チラシ

「手話通訳者の健康管理」

講師;村上 剛士(〔財〕東京社会医学研究センター理事)
*講師略歴
 ・元新聞労連労働安全衛生部長
 ・東京労働局労災防止指導員
 ・信州大学経済学部講師(国際関係社会政策プロジェクト)
*著書
  「なぜ日本人は働きすぎるのか」(平凡社)
  「働くものの安全衛生活動」(学習の友社)
  「国際労働基準で日本を変える・ILOガイドブック」(大月書店)
  「過労死予防手帳」(いのちと健康全国センター)
木下;「筑波へは、つくばマラソン参加のために来たことがあります。」っていう不思議なエネルギーに満ちた先生でした。

1.健康診断の結果から

・神経疲労
・頸肩腕の「こり」「いたみ」
・日常生活への負担
・全身疲労
・筋力の低下 → 筋力;タッピング、つまみ力、握力、背筋力
→頸肩腕(けいけんわん)障害;無理に無理を重ねると、休憩しても治りにくくなる。

2.手話通訳者の労働の特徴

参考資料;「労働と医学−No60」より「手話通訳者の仕事と職業病」高田勢介

1)高い労働意欲
・身体の具合が悪いのに、労働意欲の低下が少ない。= 無理してやってしまう。
2)神経疲労・筋肉疲労・ストレスと緊張
・筋負担   姿勢の拘束、 他律的、 聞き取り読み取り、 同時通訳
・高度の表現技能と専門性が求められる精神労働
3)人はどうして疲れるのか
・働けば必ず疲れる
・働くということは休むこと
・休息のない労働によって疲労は蓄積し慢性化する
・地球上に住むかぎり、どんな生物にも季節があり、昼夜がある
・人間が覚醒と睡眠、労働と休息を繰り返すのは基本的運命
・疲労の回復には、身体の回復だけでなく、喜び楽しみなどによって精神の回復を図ることも大切
4)労働と生活の関係(睡眠時間の切り詰め、ストレス)
5)厚生省の健康管理通達(1998.7)
木下;恥ずかしながら初めて知りました。これを知っただけでも今回の講演会はとても勉強になったといえます。

3.頸肩腕のこりいたみの特徴

1)肩の構造とこりいたみ
・肩は、足と違ってかなり自由に動く。しかし、逆にその分構造的に不安定。
・そのため、強い緊張・ストレスが継続的に加えられると、筋肉が収縮しっぱなしになってしまう。
・その結果、血行が悪くなる。 → こり、痛み、頭痛となる。
木下;「血行が悪くなる」ことが、一番の原因なんですね。だから「体操・運動」や「入浴」が有効なんですね。
2)精神的緊張とストレス
3)自律神経(交感神経・副交感神経)
・交感神経は、身体を動かす(アクセル)神経。副交感神経は、逆に身体を休める(ブレーキ)神経。
・二つが切り替わるには2時間くらいかかる。
・血圧・脈拍・体温は、朝になると上昇し、夕方になると低下、夜になるとさらに低下する。この一日のリズムを壊して夜遅くに活動的になることは自律神経にとって良くないこと → 自律神経失調症
・人間の身体としてブレーキのかかる深夜まで活動的でいることは、ブレーキを踏みながらアクセルを踏んでいるようなもの。
木下;この自律神経のお話しもとても参考になりました。確かに寝る直前までパソコンに向かって講座のカリキュラムとか必死で作ってると、布団に入っても寝付きが悪かったり、翌朝に疲れが残ったりするのです。寝る前2時間くらいから副交感神経に切り替えてやることが大切なんですねぇ〜。そう言いつつ今日も深夜までこうして「せたつむり」作ってて、最後はバタンキューで寝るんですよね。運動することによって「神経疲労を肉体疲労に置き換えてやる」というのも、なるほどと思いました。
4)神経疲労の特徴(無気力 敏感症 自律神経症)
・やる気がおきない。
・イライラする。
・「時間のストレス」 → 安心が損なわれる。 → 性格を超越して身体を壊す。

4.健康で仕事をするために

1)健康診断の事後指導を大切に(早期発見・早期治療)
2)神経疲労の回復を(空白の時間と場所 血液の循環をよくする)
・頭を使わない、何も考えない時間を作る。
・ゆったり入浴する。
・マッサージや整体(カイロプラティクス)(30分以上)
・月に1〜2回、好きなことをする時間を持つ
・誰にも邪魔されない空白の時間を持つ
3)睡眠・休養・栄養・身体運動・保温・環境
・睡眠;7時間、週1日は6時間でも良いが、週1日は8時間睡眠を取る。
・栄養;日に30品目
・保温;入浴
・運動;ヘトヘトに疲れていなければ、神経疲労を肉体疲労に置き換えて疲労を回復させる。
4)健康をまもる対策
(労働条件改善 人員・時間・環境・設備・施設 社会的支援)
・一人に負担がかかり過ぎないようにする。
・社会的支援;ケイワン問題についての啓蒙も大切。
木下;次回、養成講座では最初にストレッチやろうと思っていながら、いきなり忘れてしまった。大いに反省。ストレッチをやることって、単に身体を動かすだけでなく、常に頸肩腕障害を意識するってことにつながりますもんね。みんなもいろんなところでやりましょう。
5)生活・労働・健康(健康は幸せな生活の基本 労働・文明の基盤)
・生き生きと生きる。
・健康という土台があって、その上に充実した生活と仕事が成り立つ。

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