木のつぶやき
1999年8月12日(木)晴れ

 先週参加した「第11回ろう教育を考える全国討論集会in奈良」で、「手話コミュニケーション研究」(日本手話研究所所報)No30を買ってきました。

 No30が「重複障害」特集だったから買ったのですが、実際の論文は2本だけ。
 「まあ、取りあえず、特集だけでも読んどくか」と通勤電車の中でパラパラ。
 ところが、なんと素敵な論文に出会ってしまいました。
 それが、埼玉のろう重複障害者生活労働施設「ふれあいの里どんぐり」の施設長・細野浩一さんの書かれた「ろう重複障害者の社会的、人間的復権をめざす基本的課題」でした。
 「基本的課題」とあるように、ろう重複障害者の問題を非常に分かりやすく丁寧に説明されています。詳しい内容は、近いうちに別のページで紹介したいと思いますが、小見出しを拾ってその雰囲気をお伝えしたいと思います。

はじめに
 ろう重複障害の人たちの障害、及び生活実態
 ろう重複障害児者の教育や福祉を切り拓いた力
  −教育権の保障が新たな成人期のニーズを生んだ−
 ろうあ運動の発展とともに
 人としての命、尊厳、発達を保障する取り組みと課題
  −厳しい船出−実態にそぐわない職員基準
 仲間との労働を通して
 主体的な生活、集団づくり
 伝え合いは生きがいの源
 おわりに

 僕が、「なるほど」と思ったことの中から、一つだけご紹介します。

6頁 ろう重複障害児者の教育や福祉を切り拓いた力
     −教育権の保障が新たな成人期のニーズを生んだ−


 戦後、憲法、教育基本法において、権利としての教育が明文化され、ろう教育も義務化されたが、知的障害などを併せ持つ聴覚障害児は長く対象とされてこなかった。そのため、重複障害児はその多くが教育を受ける機会もないまま、在宅を余儀なくされるか、健聴の障害児施設に入って埋もれた存在として生きるしかなかった。
 こうした状況は、ろう重複障害児だけではなく、他の重度障害、重複障害をもつ子供たち共通の問題であったが、ろう教育、ろう学校が重複障害児を拒む理由には口話教育もまた大きな壁になっていたと考える。
 ろう教育とは、口話教育を通じて、日本国民としての能力を養うことを目的としており、その口話教育の困難な重複障害児はろう学校の対象ではないと見られていたからである。
 現に、早くも1950年代にはろう学校に特殊学級が設置され始めたが、いずれも、知的障害を持つ重複障害児のための学級ではなく、口話教育についていけないろう児のための促進学級であった。

 ろう重複に関心のある方には是非読んでもらいたい一文です。この手話研究所所報は、(財)全日本ろうあ連盟 日本手話研究所に申込めば定期購読できます。
 TC研集会などでも販売されると思いますので、そうした大会会場を狙うのも一つの手です。

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