木のつぶやき | |
2003年10月25日(土) |
政見放送の手話通訳について
「マニュフェスト解散」とかで総選挙になってしまいました。10月28日(火)公示、11月9日(日)投票なんだそうです。実質たったの12日間の選挙戦です。この国民を馬鹿にしているとしか思えない短期間の選挙運動期間の話しはさておき、「セイケンホウソウ」の手話通訳について、ぼんやり考えました。
茨城に引っ越して間もなかったのですが、前回2000年6月の衆議院選挙の時に、自由民主党茨城県の政見放送の手話通訳を担当させていただきました。久しぶりにその時のビデオを見てみましたが、1本目が民主党の政見放送で、これは全編字幕スーパーでした。手話通訳のお呼びはかからなかったわけです。そして2本目が自由民主党の手話通訳ワイプ入りのものでした。
士協会の政見放送手話通訳研修会
その時だったか、もっと前の話しだったから忘れてしまったのですが、士協会主催の政見放送手話通訳研修会に参加したことがあります。実際に壇上に立ってみんなで模擬手話通訳をやったりするんですが、当時の士協会の方針では「とにかく候補者がしゃべったことを一言も漏らさず手話にして表現する」ということで、神奈川の手話通訳者の「目にもとまらぬ」機関銃のような手話通訳を見て、エラく驚いたことが印象に残っています。
旧自治省なんかに「本当に手話通訳は、候補者の発言をそのまま手話にすることができるのか?」などと言われ続けたために、「候補者の音声語を何らかの”手話”に置き換える」ということが、最優先されていたように思います。その影響をもろに受けて前回2000年の時の僕の手話通訳は「目には止まりますが、手をただただぶんぶん振り回しているだけで意味不明」な手話通訳でした。
衆議院政見放送における手話通訳の方法
衆議院の政見放送は、政党持ち込み方式、つまり各政党が独自に政見放送を作ってきて、それを放送局に持ち込んで「そのまま」放映するという方式です。時間は約9分間。
今回の茨城県で言えば、小選挙区は7つあります。
1区 | 水戸市、下館市、下妻市、笠間市、東茨城郡(常北町、桂村、御前山村)、西茨城郡(七会村、岩瀬町)、真壁郡 |
2区 | 鹿鳴市、潮来市、東茨城郡(茨城町、小川町、美野里町、内原町、大洗町)、西茨城郡(友部町、岩間町)、鹿島郡、行方郡 |
3区 | 龍ケ崎市、取手市、牛久市、守谷市、稲敷郡、北相馬郡 |
4区 | 常陸太田市、ひたちなか市、那珂郡、久慈郡 |
5区 | 日立市、高萩市、北茨城市、多賀郡 |
6区 | 土浦市、石岡市、つくば市、新治郡、筑波郡 |
7区 | 古河市、結城市、水海道市、岩井市、結城郡、猿島郡 |
小選挙区制ですから、これらの地域からそれぞれ1名だけが選ばれるわけで、自由民主党も各地域1名ずつの候補者を立てていましたから、7名の方の政見放送ビデオが作られたわけです。
実際にはこれに比例区(北関東)にも、茨城から1名の候補者を出していましたから、都合8名の方が出演されました。さらに前後に自民党全体のPR部分があり、前回は森自民党総裁が、「にっぽん再生!」とか何とかしゃべるわけです。(その後ちっとも景気は良くなっていませんが…) これら全てを9分間に詰め込みますから、8名の候補者の話せる時間は1分程度。ついつい候補者も「早口」になりがちでした。
それに対して私が「手が回る限り」「対応させられそうな手話」を片っ端から表現していたというのが前回の手話通訳だったように感じました。
これって手話通訳って言えるんだろうか?
自由民主党の肩を持つわけではありませんが、これでは政党が何を言わんとしているのか、国民・茨城県民にはまるで伝わらないじゃないか…という疑問を強く感じました。
マニュフェスト選挙
今回の選挙では、各政党がマニュフェストと呼ばれる具体的な政策(公約)が争点になっていますから、政見放送手話通訳に求められるものは「政策の違いが有権者にキチンと伝わる」ことではないかと思います。こんなことは、どんな選挙でも当然な情報保障であるとは思うのですが、前回の「訳も分からず手をブンブン振り回してるだけの手話通訳」では、聞こえない人たちの「参政権」を保障するのは難しいと感じました。
(つづく)
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