木のつぶやき |
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2002年9月9日(月) |
相変わらずドタバタの茨城県広報テレビ番組「おはよう茨城」手話通訳録り
9月15日(日)放送分の手話通訳録りが、ありました。
本当は、今回の担当は「サブ」、つまり収録場所で、手話通訳者のお世話をしたり、手話チェックをしたり、あるいは番組プロデューサーにあれこれ注文をつけたりする役割だったのですが、メインの通訳者が急遽担当できなくなり、「サブ」の僕が手話通訳そのものをすることになったのです。もちろん緊急の場合のピンチヒッターも「サブ」の役割の一つではありますが・・。
内容は、茨城県防災航空隊の活躍の様子を紹介する番組でした。
現在は第2・第4月曜日の午後、手話通訳録りがあるのですが、その前の週の金曜日、つまり3日前に番組のビデオが宅急便で家に送られてきます。金曜の夜を入れて、3日間の練習で本番に臨むことになります。
↓
- 9月5日(木)・・・・・・・・・・・・・・・・・ビデオ編集締め切り
↓ (ビデオができ次第、即刻、手話通訳者及びサブの担当者宅へビデオテープが送られます。)
- 9月6日(金)・・・・・・・・・・・・・・・・・家に帰ると、宅急便でビデオテープと台本が届いていて、メゲる。
↓
- 金曜日は、仕事でヘトヘトになっているので、取りあえずビデオテープはそのままに。
- 土曜日は、講習会や自治会役員会の準備があって、ビデオテープはそのままに。
- 日曜日は、自治会役員会と夏祭り反省会があって、ビデオテープはそのままに。
↓
- 結局、落ち着いてビデオテープをチェックするのは、日曜の深夜スタートになってしまうのです。
<台本チェック>
- まず、台本とビデオを見比べて、原稿(セリフ)をチェックします。原稿があるだけマシ、といえばそうなのかもしれませんが、「第1稿」と書かれた台本は、その後大幅な修正や編集が加えられていて、実際のビデオを見て、必要箇所のセリフやナレーションを書き直します。
<台本チェック−その2;テロップのチェック>
- 台本とビデオのチェックでもう一つ大切なのは、テロップのチェックです。番組プロデューサーの理解が進み、また時代の流れもあって、番組にはかなりの部分にテロップ(字幕)がつくようになりました。「聴覚障害者がテロップの部分はキチンとテロップを読めるように手話通訳をダブらせない」ことを基本的な考えとしており、その部分は、手話をしないで画面を指すなどの工夫をしています。そのタイミングを予めキチンと頭の中に入れておくのは意外と大変な作業です。
<手話表現の検討>
- 僕がいつも困るのは「地名」です。今回は、「小貝川」「久慈川」「日立市」「つくば」「女体山」など。<小さい><貝><川>、久慈川は<指文字「く」><「じ」><川>、日立ってどう表すんだったけなぁ〜? 前に「笠間」という地名手話が分からなくて苦労したこともあります。(結局地元の手話を教えてもらう時間がなくて、あとから「笠間はこう表すんだよ」って指摘されました)
- 次は、時事用語や専門用語。「茨城県防災航空隊」「茨城県沖を震源とする」「地震の規模はマグニチュード7.3」「震度6弱」「地割れ」「ライフラインに壊滅的な打撃」「防災意識を高める」「初期消火」「バスの中に人が取り残された」「非常口」「緊急時」「「災害や事故が複雑化・多様化し」「大規模化」「消防防災体制を一層強化するため」「水難」「消火防御活動」「緊急搬送」「緊急事態に機動的に対応」「365日交代勤務」「レスキュー隊員」「エリート」「出動要請」「手信号で合図」「ステップに立つ」「ロープが下に投げられました」「山岳救助訓練」「ヘリポート」「ブリーフィング」「無線交信」「ホバリング」「階級」「キャリア」「陸上部」「筋肉」「ウェイトトレーニング」
- その他にも表現に困る言葉は沢山出てきます。「アナウンサー」「ものものしい雰囲気」「河川の増水」「〜という設定での訓練」「ヘリコプター」「救助」「防災の日」「河川敷」「死傷者」「一刻を争う緊急の作業は、迅速に正確に行われ、あっという間に救助されました。」「憧れの仕事」「誇りに思って仕事している」「家族の反応」「人の役に立つ」「110%くらい尊敬されていると思う」「事故のないことを祈りながら走っています」「早く自分の仕事に誇りを持てるようになりたいと思います」
<画面と手話の調整>
- だいたいの手話表現を考えたら、次には、画面を見ながら<手話の方向>や<タイミング>を調整します。これがとっても難しいのです。というのは、一般の講演会でしたら、ちょっと手話が後れてもそれほど目立ちませんが、テレビの場合は、画面が代わってしまったら、もう前のセリフの手話をしている訳にはいかないのです!シーンが代わってしまうところでは「時間内に手話をきっちり終わらせる」というのがとても大切になるのです。特に番組の最後のシーンはいつも大変神経を使います。
- また、インタビューなどの場面では、ある程度、方向を画面に合わせて、手話の左右を使い分ける工夫もあります。ところが収録は、モニターテレビの隣りにあるカメラに向かって、つまり「テレビ画面に向かって手話表現」しているので、「左右が逆!」なのです。(分かってもらえるでしょうか? 家でテレビを見ながら手話通訳して、それをそのままテレビ画面に当てはめると指さしている方向が「左右逆」になるでしょ。) 大変苦労するところです。こういった点は、サブの人がキチンとチェックして、指摘する必要があります。
- 本当は、一度ビデオを流しながら、テレビの隣で手話通訳してみて、それをビデオカメラに録ってみて、チェックするのがベストだと思います。でも、時間がなくて、なかなかそこまでできないのが僕の現状です。
- それとタイミングの面では、ナレーションの部分はどうしても早口なので、慌ただしい手話にならないように注意しつつ、内容に漏れのないように注意しつつ、かつ分かりやすい表現しなければならないという・・・なんとも通訳者泣かせの場合が多いです。しかも、画面に話者で出ていませんから、手話表現にも注意が必要なのです。(「ここはナレーションのセリフです。」ということをテレビ映像的に示す方法があるといいのですが・・・)
<本番ではとにかく番組の雰囲気に合わせた表情を!>
- 不思議なもので、一生懸命台本読んで、手話表現を考え、気合いを入れて臨んだ時に限って「失敗」が多いのです。それは、一つには「本番までに疲れてしまう」ということと、「考えてきた手話表現にとらわれすぎて表情が硬くなる」ことに原因があるのではないかと僕は考えています。
- 「本番までに疲れてしまう」のは、準備時間がないために、本番ギリギリまで手話表現を絞りきれない場合が多く、当日は、朝からずーっと手話表現のことで頭の中いっぱいなまま東京まで移動します。(収録は東京の番組制作会社の一室(けっして「スタジオ」ではありません)で行うのです。) かなり追い込まれてしまうので、どうしても体調に左右されがちというか、「リハーサルやったら力尽きてしまう」ようなことも実はあります。撮影現場に入ってリハーサルやって本番、というタイミングに集中力と体調のベストを持っていくのは案外難しいのです。
- たった15分の番組なのですが、15分間カメラに向かって手話通訳するのは、半端でないストレスになります。ライトがあたっていてすごく暑いですし、ディレクターを初め、アシスタントの人、カメラマン、照明さんなど、スタッフの方注目の中一人で通訳するのですから、ものすごい集中力を要求されるのです。僕の場合は、リハーサルを1回やっていただいて、あとはできるだけ本番1回で終われるように頑張ることにしています。途中で失敗すれば当然2回目を録るのですが、15分間の通訳を自分の練習を含め4回続けてやることになり、かなり身体に過度な負担がかかるので、結局2回目はなかなかいい通訳ができない場合が多いからです。
はてさて、今回の手話通訳はどうなりますことやら、皆さん乞うご期待を。放送は9月15日(日)朝6時45分から8チャンネルです。