このページは、講師を担当された馬場傑さんのご好意により、当日配布されたプリントを掲載したものです。 ただし、例文などで、以下を参考に(引用・借用)されている部分がありますことを予めお断りします。 ・手話文法研究室のホームページ http://jsl.gn.to/ ・鈴木康之著『手話のための言語学の常識』(全日本ろうあ連盟) |
第3回手話通訳指導者養成講座−その4
(2002/08/31)
やすらぎ
講師;馬場 傑さん
日本語−日本手話間の翻訳技術
1.翻訳とは(日本語→手話,手話→日本語)
○ 英語→日本語の例
This bus will take you to Tsukuba.
悪い翻訳「この/バスは、/あなたを/つくば/へ連れて行く/でしょう。」
良い翻訳「このバスは、つくば行きです。」
This song makes me happy.
悪い翻訳「この/歌は、/私/を幸せにする。」
良い翻訳「この歌を聴くと、私は幸せな気持ちになる。」
★文法は正しいが、自然な日本語ではない。直訳よりも意訳(意味をつかんで通訳)を。
○ 日本語→手話の場合は?
日本語にこだわった表現、日本語対応的な手話 = 悪い翻訳
ろう者の使う自然な表現、ろう者的な手話 = 良い翻訳
cf.中途失聴、難聴者向けの対応手話通訳は別
2.今までの指導(聞き取り通訳練習)
グループ分けして、各自練習 → 発表 → 指導助言「対応手話だ!」→ 終わり
★日本語と手話言語の違い、翻訳技術を指導しなくてはいけない。
3.講師に必要なスキル(=訓練して身につけた技能)
★ろう講師と聴者講師の役割分担
ろう者 ; A(第一)言語=手話、 B(第二)言語=日本語
聴 者 ; A(第一)言語=日本語、B(第二)言語=手話
聴者が得意 ろう者が得意
日本語 →(理解)→ 翻訳 →(表出)→ 手話 <聞き取り通訳>
日本語 ←(表出)← 翻訳 ←(理解)← 手話 <読み取り通訳>
例)@母が 私に 弁当を 作ってくれた。
A母が 私の 弁当を 作ってくれた。
B私に 母が 弁当を 作ってくれた。
C母に 私が 弁当を 作ってくれた。
D私が 母の 弁当を 作ってくれた。
⇒意味が同じなのはどれ? 日本語として間違っているのはどれ?(聴者が得意)
⇒手話に翻訳するとどうなる?(ろう者が得意)
No 受講生の手話表現 表現者 1 母/私/ために/弁当/作る/くれた 基本 2 母/弁当/私/くれた ?さん 3 弁当/くれた/私/母 Tさん(ろう) 4 弁当/母/作る/くれた Kさん(ろう) 5 母/指さし(母)/作る/弁当/私/くれる Yさん(ろう)
★受講生に見本を見せる
聞き取り通訳(ろう講師)、読み取り通訳(聴者講師)
○ teacher talk(講師らしい話し方)
コードスイッチングせず、ろう的な手話で、分かりやすく(受講生のレベルに合わせて)。
そのためには日ごろの訓練が必要。
◆講師は、よい手話の見本をたくさん見せること!
(ポイントの説明も加えれば、なお良い!)
★日本語と手話の文法的な違い、翻訳の技術を指導する
<ここで一度休憩が入りました。⇒つづく>