木のつぶやき | |
2002年9月11日(水) |
「アメリカじゃいない側」の9.11
(週刊SPA!9.17号81頁「短期集中企画”同時多発テロから1年”」(扶桑社)より転載します。) 「この半年、ブッシュ政権はイラクに対して「先制攻撃に即刻踏み切るべき」「核攻撃も辞さない」などの発言を続けている。来年の攻撃開始も説も報じられ、いよいよ情勢はキナ臭くなってきた。でも、ちょっと待って欲しい。同時多発テロ以降、イラクその他のアメリカ以外の場所で何が起きたのか、どこまで知っているだろうか?」 ”テロ支援国家”イラクの現状 <現在も続く 空爆で民間人30万人が死亡> <経済制裁という”大虐殺”で150万人が死亡> ・イラク国内で食料不足や医療品の不足による犠牲者は、99年に行われたユニセフの調査で150万人 <アメリカの言う「正義」は信用できるか?> ・さらに、もしアメリカの大規模な攻撃が始まった場合、支援物資を持ってくるNGOも撤退し、状況はますます深刻になる恐れがある。今、イラクでは戦争が始まったとき、どうやって生活必需品を手に入れるか、パニックになって いる人々も多いという。 ・現在のイラク国民の窮状を見れば、たとえサダム・フセインの政策に問題があるにせよ、イラクに戦争を仕掛けるのは酷だと思える。なぜアメリカはイラク攻撃に執念を燃やすのか。 ・国際情勢解説者の田中宇氏はこう語る。「イラク攻撃の理由は、表向きは『イラクは生物兵器など大量破壊兵器を持っており、それがテロリストの手に渡ってアメリカが攻撃される危険がある』というものです。しかし実はイラクは大量破壊兵器を造れる状態にはない可能性が高い。それは国連のイラク査察団の団長だったスコット・リッターが明言しています。 ・それでもなお、なぜそんなに攻撃したいのか。一つは石油利権でしょう。石油の埋蔵量が多く採掘コストも安い湾岸諸国に、アメリカの軍事力に頼らざるを得ない状況をつくっておくためです。 ・それからこれは仮説ですが、ブッシュ大統領は戦争をしないと政権維持ができないのではないか。昨年のエンロン破綻やチェイニー副大統領と産業界の癒着などから、この10年の好景気を支えていた経済構造自体に問題があるとわかってきた。 ・それが経済に深刻な悪影響を与えて政治危機になったところに、9・11の事件があって支持率が跳ね上がりました。アフガン戦争が一段落した後、再び国民の目をそらす戦争を必要としていると考えられます」 ・また、在独イラク人A氏はこう語る。「もしブッシュがフセインを倒してイラクに民主主義が訪れるなら、アメリカの攻撃を支持するべきなのかもしれない。反体制派のイラク人はひどい迫害を受けて、国外に亡命せざるを得ない状況だから。今、国内ではフセインの批判をしただけで逮捕されてしまう。ビザ取得の関係もあるから、国外だって安心できない。だが、そんなフセインを育てたのはアメリカだ。今のイラクの状況すべてにアメリカの責任があると思う」。 ・アメリカの「正義」は本当に信用できるものなのか? これは今、世界を覆っている共通の疑問なのかもしれない。 |
リンクでも紹介している、田中 宇(さかい)さんのメールマガジンでも、9月9日付けで「米イラク攻撃の謎を解く」との記事を掲載している。
僕も「9.11」を、いや、「9.11だからイラク攻撃」で良いのか?を考えてみた。
同じ、SPA!32頁には「神足裕司のニュースコラム」で”1年が経過して改めて問う。米国テロは本当にテロだったか”を取り上げている。
1年前の9月11日、私は映画俳優をやっていた。台風が来ていた。ひどい風で、皇居の中に落ちたクルマを見た。日本橋の百貨店へ70名のエキストラを集めてドタバタ劇を撮影していた時、守衛室のテレビで飛行機が世界貿易センター(WTC)ピルへ突っ込んでいくのを見た。 信じられない光景、とはよく言うものだが、1年経った今も私には実感できていない。 朦朧としたなかで、その翌日、ラジオ番組『アクセス』(TBS)へ招いた中東専門家のゲストが信じがたい解説をした。 要旨は、こうだ。イスラムのテロだという米政府、プッシュの発表はおかしい。自爆テロからまず連想すべきはパレスチナであり、国内犯罪者による攻撃も念頭に置くべきだ。アフガンの荒野に暮らすタリバン、ウサマ・ピンラディンにそのような力があろうはずがない。プッシュ大統領は、パレスチナ問題を事件の背景と国民に勘ぐらせないため、別な敵をでっち上げた可能性がある。米政府の自作自演といった可能性まである。リアリティのない映像の上に重ねられた、リアリティのない話に、不甲斐なくも私は「そんなことあるのか」と訝るのみだった。 陰謀史観と一笑に付すこともできる。彼の筋書きは、新聞でもテレビでも語られたことがない。 WTCビル倒壊は、果たしてテロだったのか? こんな基本に今さら疑いを抱くのはおかしなことだ。膨大な報道が伝えているではないか。ビンラディンがやった。テロは壊滅せよ。アフガンはすでに復興へ向かっている。 1年が経ち、その男にまた会うことにした。田中宇氏はジャーナリストと呼ばれるのを好まない。中東問題解説者と名乗る。 「あの時の疑問は解けないままです」と田中氏は語った。 「たとえば、なぜジェット戦闘機をペンタゴンへ向かわせなかったのでしょうか」 2001年9月11日午前7時59分、ボストンを飛び立ったAA11便がハイジャックされ、8時52分にボストン近くのオーティス空軍基地からF15戦闘機が発進した。 すでに1機目はビルへ激突しており、2機目が激突する9時3分にも間に合わなかった。しかし、それならばどうしてF15は、次の標的になった米国防総省、ペンタゴンを守りに向かわなかったのか。ワシントン発、AA77便がハイジャックされ、ペンタゴンへ突っ込んだのは9時40分。その間40分余り。2機目の衝突にも遅れたF15だが、ニューヨークからならペンタゴンのあるワシントンへわずか10分の距離ではないか(田中宇著『仕組まれた9・11』)。 「少なくとも事前にモサド(イスラエルの諜報機関)はWTCビルテロの情報を掴んでいた。当初1万人と言われた犠牲者の数は、今では2500人に修正されていますが、ユダヤ人は大量に避難した。知りたいのは同じように避難したロシア人の数なんです」 というのは、ロシアも事前に情報を掴んでいて米国へ伝えたが相手にされなかった、という情報があるからだ。 断るまでもないが、田中氏は当て推量で発言しているのではない。ロシアのプラウダからの引用だ。 世界の諜報機関は互いに情報をやりとりしている。それでもCIAが動かなかったのはなぜか? ここで思い当たるのは、テロの後にCIAほか、米諜報機関の予算が大幅増額されたことだ。 それから、たとえば「なぜアフガン攻撃後、タリバンによる人権侵害が宣伝されたのでしょうか」 と、田中氏は、私も抱いていた疑問を投げかける。ブルカで顔を隠し学校へも行けなかった女性が解放された。それは、我々の価値基準では「良いこと」かもしれない。だが、その陰で、空爆によって多くの死者が出た。 “20人目のハイジャック犯”モロッコ系フランス人のザカリアス・ムサウイはテロ前の8月に逮捕されたが、実行犯と決めつけられただけで、何の実証もされていない。「みられる十みられる÷2のような判決が平気で出されている」 これほどの、異論を紹介するのに紙数が少なすぎるが、結果的に、田中氏が著書のサブタイトルにした「アメリカは戦争を欲していた」可能性を否定できなくなる。 <対テロ防衛網は、米軍需産業が作ったポスト冷戦> 91年の湾岸戦争を機に、サウジアラビアの米駐留軍が大幅に増えた。その防衛網にピンラディンがへそを曲げて祖国を捨てるのだが、結果、何が起きたかと言えば、中東和平は米軍なしになりたたなくなった。 中央アジアでも同じ事が起きている。アフガン攻撃のためのウズベキスタン米軍基地は1500人規模の約束だったのに、今や5000人になろうとしている。 田中氏の指摘から私が思い浮かべるのはバックスアメリカーナ、世界の警察たるアメリカの過剰な自負心だが、氏が読んでいるのはもっと根深い、恐ろしい筋だ。「戦争で得をしたのは、ブッシュ、チェイニー、ラムズフェルドらのタカ派です。彼らは軍需産業にとってのハッピー、過去の冷戦構造を望んでいる。一方、クリントン時代のバランス・オブ・パワー派(BOP)にパウエルのような人がいる。よくは見えないのですが、こんな対立だと思うのです」 米国が軍需産業のために米ソ冷戦構造を強調した。スター・ウォーズ構想も原潜も、軍事拡大は東側の脅威があればこそだ。 戦争で人命が失われれば、国民は嫌気がさす。が、命の失われない睨み合いの冷戦なら、軍事予算拡大のおいしい口実になる。 そのためにビンラディンもフセイン大統領も永久に生きて、世界の悪者になってくれたほうが都合がよい。対テロ防衛網は、米軍雲産業が作ったポスト冷戦だ、と。 冷戦を望む派閥と、それを拒むBOP派の闘いは、昨年まで冷戦派の大勝利だったが、巻き返しもある。それが、エンロン、ワールドコム粉飾決算といったブッシュ政権への攻撃だと田中氏は読む。 与太話と取られても仕方ない。が、たとえそうだとして、私はメディアで流された根拠のない情報を信じ込んだ自分を反省した。 テロは、本当にテロだったのか。我々は1年間ダマされ続けてきただけではないのか。 |
そして今、9月11日(水)午後10時〜11時40分TBSラジオ「アクセス」で、神足裕司氏、田中宇氏、宮崎哲弥氏が、「9.11世界は変わったか?」をテーマにバトルトークを展開している。
<つづく>
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