手話通訳者になるためのマメ知識10「エンゲージメント【engagement】」

■「障害者の権利擁護(アドボカシー)」について調べている中で『障害者福祉概説』(明石書店)の318ページに、ソーシャルワークの過程を表す4つの局面の第1番目として「エンゲージメントの局面」が出ていました。
(2)ソーシャルワークの過程におけるアドボガシーの視点
〔1〕エンゲージメントの局面
「最初の関わりであるこの局面では、利用者がアドボガシーを必要とする状況について、本人自身の言葉で「言ってもいいのだ」と思い、表現できる環境を整えることに最大限の注意を払う。」
エンゲージメントとインテークの違いは、ソーシャルワーカーと利用者の立場のとらえ方にあるといわれる。インテークは「受理」と訳され、ソーシャルワーカーと利用者がそれぞれ受け手と送り手という役割を明確にして展開されるのに対し、エンゲージメントにおいては、両者が対等なパートナーシップをもてる信頼関係を形成していく過程と捉えられる。ソーシャルワーカーは、利用者自身が解決していくための力を高める上で、その動機を共有できるような関係づくりという点に力を注ぐことである。
■げーっ、何が書いてあるのか、全然わからねぇ〜よ!
■辞書的な意味としては「婚約」です。(goo国語辞典より)
■社会福祉用語辞典第2版(ミネルヴァ書房)には掲載がありませんでした。
■そこでネットであれこれ調べてみました。
穏やかな関与(エンゲージメント
なんて、これはアメリカの政治政策(北朝鮮など対する外交施策)を表す言葉として使われていました。
「アンガージュマン」は社会的困難などに積極的に関わっていこうとする態度のことですが、この言葉をはじめて聞く学生諸氏には、英語読みすれば「エンゲージメント」つまり、日本語では「婚約」などに使われる「エンゲージ」(例:婚約指輪=エンゲージ・リング)のことですから、「アンガージュマン」には、どの程度真摯な態度が求められるかが理解してもらえると思います。
というわけで(寮美千子さんのホームページの掲示板より)、実は「アンガージュマン」って言葉と同義なんですね。2003年版知恵蔵(朝日新聞社)には、
アンガージュマン〔engagement 仏〕
社会や政治の動きに積極的に参加すること
なんて形で掲載されていました。
そういう意味で言えば、先ほどから出ている言葉でいえばコミットメントっていう言葉であったり、永井君が言っていたので言えば、関わりというものが人と人の間には常にあるんだ。他人のことも自分のことなんだっていうような考え方だとか、僕たち大学闘争時代の人間が使った言葉で言えば、アンガジュマンというフランス語ですね。英語でいうとエンゲージメント。一つ一つの契約関係の中で生きていく。その契約関係の厳しさの中で、なおかつ自分というものの自立性というものを高めていく。 (ソシオ・ステーションの「第1回講義 問題解決ビジネス塾とは」より)
「大学闘争時代の人間が使った言葉」ねぇ〜、なるほど。何となくイメージは分かってきた。
そこに、民主的市民関与が正統性を担保する鍵にと書きましたのは、そこに「エンゲージメント」とちょっと耳なれない言葉を書いているんですけれども、いわゆる市民参加ではなくて参画、あるいは関与というのはどういうことかといいますと、計画の段階もそうでございますし、実施する段階でもかかわる。そして、その実施した結果がどうだったか、どうなっているかということの評価も市民がかかわるというその一連の過程に市民が関与していく、こういう新しい概念でございまして、実際にこれは多くの国で最近急速に高まっております。
これ、どっから引っ張ってきたかというと、東京都議会の行財政改革特別委員会の議事録なんですね。ようやく分かった気がします。つまりソーシャルワークにおけるエンゲージメントとは、「ソーシャルワークの一連の過程(計画・実施・評価など)に障害者自身が関わっていくこと」と言えると思いますが、ここでは局面を4つに分け、その第1段階をエンゲージメントの局面としていますので、「ソーシャルワークを障害者自身が主体的に受けようとすること」くらいの意味になるかと思います。

マメ知識メニューに戻る> <トップページに戻る