タイトル | 進化する日本サッカー | ![]() |
著者 | 忠鉢 信一 | |
出版社 | 集英社新書 | |
発行日 | 2001年12月19日 第一刷発行 | |
読了日 | 2002年5月6日 | |
価格 | 660円+税 |
「進化する日本サッカー」(忠鉢信一著、集英社新書660円税別)に学ぼう!
私が、せたつむりを再更新するようになってからずっと頭の中にある1冊の本があります。それが「進化する日本サッカー」です。
第1章 日本サッカー強化の軌跡
第2章 指導者の養成
第3章 ナショナル・トレーニング・センター制度の始まり
第4章 低迷そして改革のときへ
第5章 指導者トルシエ
第6章 近未来への予言
私は、この本を是非茨城の皆さんに読んで欲しいのです。そして、みんなで一緒に「進化する茨城手話通訳者」として育ちあっていきたいと考えています。
また、私は、この本を紹介するにあたって、茨城の現状に対して厳しい書き方もしますが、それは「私自身を含めた茨城の今」なんだと認識しています。私自身が、もう一度「基本に返って」良い手話通訳者を目指したいと考えていますし、自分の年齢を考えればむしろ「良き指導者」にならなければと考えています。
P25「スポーツの発展のために必要なことは、組織と運営と指導者」がクラマーの持論。良い指導者が良い選手を育て、良いチームを作る。指導者が一流でなければ、一流の選手は育たないという考えだった。 | ◆クラマーさんは、「日本サッカーの父」と呼ばれ、1964年の東京五輪に向けた強化のため日本に招かれた西ドイツのサッカーコーチだ。今、茨城でもようやく養成講座の組織見直しが終わった。次は「運営」の強化であり、さらには「指導者」なのだと思う。 |
P11「「サッカー大国」と呼ばれるワールドカップの常連国には、厚いサッカーの基盤が存在する。代表チームに戦力を供給する選手層の厚さと、その質を保つために不可欠な若い選手たちを育てる環境と、良いサッカーとは何かという正しい価値観が備わっている。そこに日々激しくなる競争に遅れない取り組みが加わる。」 | ◆「良いサッカーとは何かという正しい価値観」すなわち「良い手話通訳とは何か」についての共通の理解がまだまだ不足していると思う。お互いの手話通訳を積極的に批判できる雰囲気、ろう者や仲間からの評価を素直に受け止める謙虚な姿勢、そして「こんな手話通訳をめざそう」という高い理想像を作っていきたいのだ。 |
P50「私は指導を行うとき自分を先生だとは思わない。学ぶ姿勢が失われるからだ。大切なことは練習と学習の繰り返し。選手とともに学ぶのだ。」 | ◆クラマーさんは当時の日本の大学サッカーの現状を見て、欧州のプロ選手よりはるかに長い練習時間に比べその成果は10分の1もあがっていないとして、その理由は「指導者の水準が石器時代のそれといっていいくらい、彼らに指導力があまりにもないからである。」と指摘しました。この言葉に私は、「昔東京で教わった古い知識を引っ張り出して先生面していた自分」をとても恥ずかしく思いました。 |
P70「日本リーグで大人の選手を教えている指導者は、(中略)説教をしているだけでなんにも伝えていない。そういう指導者にかぎって必ず「うちの選手たちは何度同じことをいってもわからない」と愚痴をこぼす。本当は自分の指導力が足りないことに気づかない。」 | |
P107(31歳の若さで強化委員長の要職についた加藤久さんは、地方の強化体制にメスを入れるにあたって)「出身地の宮城県は、(中略)伝わってくるサッカーの情報も少なくて、日本ユース代表の合宿に参加したとき、ほかの選手たちとの差、サッカーの常識の違いをものすごく感じ」、「地方では何が問題なのか。同じ境遇にある後輩たちに何が必要なのか。」という視点に立って地域ブロックごとに指導者を派遣し、中央と地方を結ぶネットワークを広げた。 | ◆茨城も南北に長い地理的情勢から、県北・県央では指導者の確保に大変苦労されています。地方としての課題のとらえ方とそれに合わせた独自の対策が不可欠だと思います。全県的な指導者の交流と情報交換がよりいっそう求められていると思うのです。私がホームページという形で「指導者」問題を訴えかけるのも、普段なかなかお会いすることのできない県北・県央および鹿行(ろっこう;鹿島地域)の皆さんにも私の考えを知っていただきたいからです。 |
P123「世界のトップランクとどういう部分で差があるかということを知ったら、結局特別なことではない。基本が違う。体力でいえば基礎体力がない。技術的なことでいえば、基本的なつなぎのパスの丁寧さ。戦術でいえば、常にゴールの方向を意識したボールの止め方、視野の感覚。日本でもみんなわかっているつもりでいた。でも、でき方のレベルが世界の標準とは圧倒的に違った。」 | ◆最初にも書いたように茨城の現状を批判することがこのページの目的ではありません。しかし、2年間手話通訳士養成講座に関わって感じたことは、まさに「基本の違い」だったのです。1)手話通訳者としてふさわしいキリッとした身体の姿勢・身のこなし、2)一つ一つの手話表現の丁寧さと読み取り通訳における自分の声・しゃべり方に対する細心の注意。そして何よりも3)常に、「通訳の受け手」であるろう者を意識すること、ろう者に対して「何としても情報を伝えるのだ」という懸命な努力。これら3つの基本的課題をもう一度原点に返ってみんなで学んで行きたいと思います。 |
P129「なぜ指導者養成制度を変えなければいけないと思ったかというと、(中略)日本の指導者養成の研修会は参加しても楽しくなかったから。楽しくないのは、自分たちのためになっていると実感できなかったからだと思う。まずはドイツのように、受講生とインストラクターがお互いに意見を出し合う形で進む研修会にしたかった。そういうインタラクティブな環境がクリエイティビティを引き出す。自分でクリエイトしていく研修なら、自分のためだと思えるし、きっと楽しい。」 | ◆4月27日から14年度の指導者養成研修会がスタートしました。今年度は「自主運営、自主研修」となり、まさに我々自身の努力が求められています。第1回研修会の報告を読ませていただくと大変内容の濃い、素晴らしいものだったようです。(後日レポートをホームページ上に掲載予定です。)6/29土の第2回は私もスタッフの一員となっていますので、是非頑張って準備をしたいと考えています。テーマは「指導技術」です。「役割分担」や「指導案の作り方」「教材作成」などについて学ぶ予定です。 |
P132「指導者のレベルをあげていくためには、指導者を教える自分たちも常にレベルアップをしていかなければならない。学ぶことをやめたとき、教えることをやめなければならない。フランス代表監督のロジェ・ルメールの言葉です。お互いに質問しやすい環境を作ること。それから受講生が自分で作り出す枠を与えてあげること。そして受講生同士でも批評、批判し合うチャンスを作ることが必要だと思う。」 | |
P162最後にフィリップ・トルシエの言葉 「99年からずっと私はいってきた。強くなるには辛抱が必要だと。これは指導の基本でもある。」 |
◆長期的なスタンスで「進化」に取り組みたいと思います。時間がかかってもいいから、キチンと各地域で「基本」を大切にした学習が定着するようにしたい。「基本」とは何か?私は、「ろう者から学ぶ」これ以外にないと思います。そして「ろう者も学ぶ」ことだと思います。 ◆「良い手話通訳者」を育てるのは、ろう者の力次第だと思いますし、良い手話通訳者がろう者の社会参加・能力の発揮を支えるのです。そのためにも「若い人の育成=教育」を新たな課題としていかなければならないのではないでしょうか?ろう学校でろう教師が増えつつあります。ろうの子どもたちが「ろう成人」と接しながら育っていける環境が、少しずつですが整いつつあります。 ◆次は、聞こえる子どもの中から「次世代の手話通訳者」を発掘するような教育システムが求められてくるのは、この本を読めば、納得していただけると思います。そのために私が考えていることの一つが、「筑波大学に4年制手話通訳課程」を設置することです。 |
「世界との差はどこにあると分析していますか?」と尋ねられ小野剛コーチは、こう答えている。
「良くなってきたとはいえ基本にまだ差がある。基本は低いレベルの段階で必要なことだと誤解されやすいんだけど、高いレベルになるほど基本の差を隠すことができなくなる。基本の水準が低かったら、世界大会では太刀打ちできない。」
私もこの言葉を肝に銘じて、あらためて「基本」の勉強に一生懸命取り組みたいと思います。