2002.7.25(木)会話例文−第2班−

<解説版>

「シャガール展を見に行こう」

A ; ねえねえ、仕事、忙しい?

B ; 慣れないから大変! やせたでしょ。

A ; 本当ー(疑いの目線)

この前の「親子ふれあい」楽しかったね。
<「親子ふれあい」は固有名詞なので、そのイベントを知らない人にはちょっと読み取りにくいですね。>
綱引きで頑張りすぎて腕が痛いよ。

B ; うん、楽しかったね。

子供と同じチームになれなかったので、子供がむくれちゃったよ。
<受講生は、「子供」「同じ」「チーム」「〜でない」と表現しましたが、先に「子供」「同じ」と表現して、最後に「〜ない」と否定すると意味を捉えにくくなります。そこでこのように「子供」「チーム」「別(分かれた)」と表現してみました。>

A ; 大変だったよね。でも、3組優勝できて良かったね。

<「3組」が読み取りにくかったですね。それは、直前に「チーム」という表現で同じ「グループ」という手話を使っていたからです。そこで西尾さんは「クラス(教室)」という手話で表現されました。>
ところで、今度、東京の上野に行かない?

B ; 木曜日ならOK。買い物、それとも映画?

A ; シャガール展見に行かない、新聞屋さんで優待券をもらったの。

<後半を受講生は、「新聞」「優待(招待)」「券」「もらった」と表現しました。私は「新聞の人(販売員?)、券、くれた」と表現してみました。なぜなら、「優待」にも「人」の表現が入っていて、しかも「自分の方に招く」動きが入っているので、「もらった」の表現と動きが重なってしまい、分かりにくいなと感じたからです。このように手話の場合は、手話の動きと方向が大切ですので、「新聞」のところで「券」を表現して、その場所から「券」の手話を自分の身体に引き寄せ「もらった」と表すと関係性が読み取りやすくなるのではないでしょうか。>

B ; 行きたかったんだ。何で行く? 電車それともバス?

A ; 高速バスで行こうよ。私、きぬの里7時50分発に乗るので、あなた久保が丘8時に乗ってね。

<ここでも、先ほどと同じように、「私」「時間」「7」「50」+「きぬのさと」「乗る」とやっておいて、そこから「バス」の手話を相手に向かって走らせて、相手のところで「あなた」「くぼがおか」「時間」「8」「乗る」、そしてそこから「一緒に行く」とやると分かりやすいと思います。>

B ; 子供が4時過ぎに帰ってくるので、遅くとも3時のバスに乗らなきゃ。

<ここは、ちょっと説明がヘタでした。まず、右側で「息子」「学校」「終わる」「家」「帰ってくる」「時間」「4」と表現しておいて、自分のところで「だから」「私」「東京」「バス」「乗る」「時間」「3」「必要」が、いいように思います。特に「4」と「3」を強調することを忘れずに。>

A ; そうね。でも、おいしい物食べて帰ってこようね。

<ここも、説明がイマイチでした。「でも」「美味しい」「食べる」「食べる」「終わり」「そのあと」「帰ろう」がいいのではないでしょうか。「そのあと」はなくても「終わり」の手話を強調すれば、分かると思います。>

B ; そうだね。

◆ポイント

◇関連手話単語

◆僕の感想

  1. 受講生が考えてくれた会話文には、パワーを感じました。僕などどうしても「こういう単語を入れよう」とか「こういう表現のポイントを取り入れなきゃ」などと考えてしまう結果、出来上がった練習文が不自然なつまらない会話になってしまうのですが、前回同様、受講生が考えて下さった会話例文は実にいいですね。まさに「会話が弾む」のです。
  2. それと、講習会を受けた人にありがちな「手話が分からないと表現できない」パターンを防止するきっかけになるような気がします。というのは、まず、受講生が「言葉どおり」に表現してくれた手話を見て、その後さらに講師の解説によってモデル的な表現を知ることで、自然な日本語をどのような形で手話言語に置き換えていくのか、その思考過程をなぞる学習ができるように思うのです。
  3. そして、何よりも会話の内容が「身近で」あるために表現していて「楽しい」のです。

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