手話サークルたんぽぽ機関誌1998年7月号より
参議院選挙が終わりました。みんなは、投票に行きましたか? ホントは、例会の時にサンセイケンについて勉強したかったのですが、間に合いませんでした。今回は、東京都選挙管理委員会からもらった政見放送の放送日程を配るだけで終わってしまいましたが、とても大切なことなので《次の選挙に向けて》みんなと一緒にサンセイケンについておさらいしたいと思います。(96年の衆議院選挙の時に書いたものを一部加筆修正して再録します。)
参政権(さんせいけん)とは、"政治に参加する権利"のことです。"政治に参加する"ってどういうことだと思います?
アメリカのリンカーン大統領の有名な言葉"国民の、国民による、国民のための政治"を知ってますか?
第一の「国民の政治」は、政治のあり方を最終的に決定する権限は、国民にあるとするものです。これを裏付けるのが、第二の「国民による政治」です。主権者である国民が、代表者として国会議員を選挙で選び、国の政治を営んでいくというものです。この「国民による政治」の実現のためには、選挙でどんな国会議員を選ぶかがキーポイントとなります。参政権とは、おおざっぱに言うとこの選挙によって政治に参加する権利のことです。そして、聴覚障害者(+広く障害者全般やいわゆる少数者=マイノリティを含む)にとって選挙における『完全参加と平等』がまだまだ保障されていないのが日本の現状なのです。
聴覚障害者の参政権を考える上で現在問題となっているのは、大きく分けて次の三つのことです。
(1)政見放送 | 現在、国会議員と知事選挙に限ってテレビ政見放送が行われています。昭和58年、それまで公費による手話通訳が認められていた立会演説会が廃止され政見放送が始まりました。以来、聴覚障害者は「手話通訳と字幕を付けて欲しい」という運動を行なってきました。95年夏の参議院選挙で初めてテレビ政見放送に手話通訳の挿入が認められました(字幕は認められませんでした)。しかし、96年衆議院選挙では、字幕・手話通訳ともに「公的な保障」が見送られてしまいました。 |
(2)選挙運動 | 現在の公職選挙法(選挙に関するいろいろな規制を定めている法律)では、戸別訪問など直接対面してする選挙運動や文書・図画を配布する方法での選挙運動を厳しく制限しています。ところが、電話を使って個人に投票依頼をすることは、自由としています。電話のできない聴覚障害者が、直接文書を手渡すとかFAXを使って選挙運動をすることは、違反とされているのです。 |
(3)投票所における情報保障 | 投票所に行って投票の仕方に迷ったり、分からないことがあってもなんか聞きづらかったりするのは、なにも聞こえない人に限りません。手話通訳や文字情報による案内など主権者である国民のための投票所を目指してもっともっとなすべきことはたくさんあります。(今回、「介助者」が認められたようですが、詳しい内容がわかりません。調査中) |
1967 | 立会演説会に初めて手話通訳がついた | 東京都 中野区 |
1971 | 立会演説会の手話通訳公費負担を自治省が通達 | |
1981 | 玉野事件(言語障害を持つ玉野ふいさんが候補者の演説に感動して知人に後援会のビラなどを配り、公職選挙法違反とされた事件) | 和歌山県御坊市 |
1983 | 公職選挙法改正→立会演説会廃止→テレビ政見放送に切り替えられた。 全日本ろうあ連盟は、自治大臣に「テレビ政見放送に字幕または手話通訳を挿入して下さい」と要望書提出。 自治省回答 @放送の技術的問題(短期間の放送で技術的に間に合わない) A 公職選挙法上の問題(150条1項「政見を録音又は録画し、これをそのまま放送しなければならない」) B 手話の正確さ、公正さに問題あり。 |
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1986 | 「無言の政見放送」 衆議院東京選挙区から聴覚障害者立候補。政見放送において手話通訳・字幕・代読も認められなかった。 同年12月に自治省内に「政見放送研究会」発足 |
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1992 | 手話通訳付き政見ビデオ上映会の費用を国が助成。 | |
1993 | 政見放送についての細川首相発言 | |
1994 | 自治省「政見放送研究会」報告書 | |
1995 | 政見放送の一部(参議院比例区選挙)に初めて手話通訳が挿入された。 | |
1996 | 衆議院選挙。手話通訳の公的保障は実現しなかったが、小選挙区比例代表選挙において、政党持込みビデオに限り「各政党の判断で手話通訳の挿入ができる」とされ、いくつかの政党が政見放送に手話通訳をつけた。 |
ホントは今回の参議院選挙についても詳しく説明をしたかったのですが、紙面が尽きてしまいました。あとは、今度「お会いした時」にお話しします。
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