■茨城県手話通訳問題研究会・緊急講演会「障害者自立支援法案」と手話通訳制度(原稿案)■

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No 項 目 内  容
1. 日 時 平成17年06月26日(日)13:30〜15:30
2. 場 所 つくば市大穂公民館
3. 対 象 茨通研会員(一般参加あり)
4. テーマ 「障害者自立支援法案」と手話通訳制度

5.原稿(案)

6月21日(火)現在

No 項 目 内  容 メモ
1. テーマ 障害者自立支援法案とは
こんにちは、谷和原村の木下耕一と申します。
 今日は、「障害者自立支援法案」について、皆さんと一緒に勉強していきたいと思います。


 4月24日の茨通研総会の時に午後、全通研の副運営委員長石川芳郎さんがこの「障害者自立支援法案」について講演をしてくださいました。皆さんもお聞きになりましたか。石川さんの講演をお聞きになった方は何人くらいいらっしゃいますか?
 私も何度も石川さんの資料と自分で書いたノートを読み直して勉強してきました。とても石川さんのようには話せませんが、私なりの視点で問題点を整理してきましたので、よろしくお願いします。
■法案を読んでみよう■  さて、「障害者自立支援法案」読んだことありますか? やすらぎ新聞4月号に法案の要綱の抜粋が載っていましたから、ご存じの方も多いと思います。
 法律の文章は難しいんですが、難しいといってもこれが新しい障害者の制度を決めることになるわけですから、避けて通れないと思います。嫌なことは最初に片付けるという意味で、法案そのものをまず読んでみましょう。
 とりあえず目次で法案の全体の構成を見てみましょう。
■法案目次■ 障害者自立支援法案

 目 次

第一章 総則(第一条―第五条)

第二章 自立支援給付
 第一節 通則(第六条―第十四条)

 第二節 介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費、特例訓練等給付費、サービス利用計画作成費、高額障害福祉サービス費、特定障害者特別給付費及び特例特定障害者特別給付費の支給
  第一款 市町村審査会(第十五条―第十八条)
  第二款 支給決定等(第十九条―第二十七条)
  第三款 介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費及び特例訓練等給付費の支給(第二十八条―第三十一条)
  第四款 サービス利用計画作成費、高額障害福祉サービス費、特定障害者特別給付費及び特例特定障害者特別給付費の支給(第三十二条―第三十五条)
  第五款 指定障害福祉サービス事業者、指定障害者支援施設等及び指定相談支援事業者(第三十六条―第五十一条)

 第三節 自立支援医療費、療養介護医療費及び基準該当療養介護医療費の支給(第五十二条―第七十五条)

 第四節 補装具費の支給(第七十六条)

第三章 地域生活支援事業(第七十七条・第七十八条)

第四章 事業及び施設(第七十九条―第八十六条)

第五章 障害福祉計画(第八十七条―第九十一条)

第六章 費用(第九十二条―第九十六条)

第七章 審査請求(第九十七条―第百五条)

第八章 雑則(第百六条―第百八条)

第九章 罰則(第百九条―第百十五条)
 
附則
●資料1
●厚生労働省ホームページ「障害者自立支援法案について
 なんかもうこの資料見ただけで「今日はダメだ」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。私もそうです。ちょっと頑張って読んでみましょう。
 全部で9章からなっていますね。
 第1章は「総則」といって、この法案の目的(第1条)や市町村・都道府県・国それぞれの責務(第2条)、そして用語の定義(第4条)などが書かれています。例えばこの法律でいう「障害者」とは誰のことを指すのかとかで、法律の対象となる「障害者の範囲」を決めているわけですから、実はとても重要な意味があるわけです。

第2章が「自立支援給付」といって、今回の新しい制度の本体というか中心となる部分が書かれています。

そしてもう一つの柱となるのが、第3章の「地域生活支援事業」です。この中の一つ目、第77条が市町村の地域生活支援事業を規定していて、手話通訳派遣はここに書かれているのです。そして次の第78条は、都道府県の地域生活支援事業について規定しています。

一つ飛ばして第5章が障害福祉計画です。皆さんの地元の各市町村の障害福祉計画の中に、キチンと手話通訳に関する事業を書かせていく取り組みが大切になっていくのですね。

そして、第6章が費用に関する条文になっているわけです。

全部で115条まであって、法案全文を読むのはちょっと大変です。厚生労働省のホームページに法案が載っていますので、是非チャレンジしてみてください。
●第1章
 「総則」
●第2章
 「自立支援給付」
●第3章
 「地域生活支援事業」
●第5章
 「障害福祉計画」
●第6章
 「費用」
■メモ■厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/topics/2005/02/tp0214-1.html
・障害者自立支援法案の概要(PDF:174KB)
・今後の障害保健福祉施策について(PDF:200KB)
・障害者自立支援法案による改革【説明資料】(PDF:317KB)
・障害者自立支援法案要綱(PDF:52KB)
・障害者自立支援法案(PDF:399KB)
・新旧対照条文
照会先: 社会・援護局障害保健福祉部企画課(内線3017)
では、次にもうひと頑張りして、手話通訳に関する規定のある第3章の中身を見てみましょう。
■第3章地域生活支援事業■ 第三章 地域生活支援事業

(市町村の地域生活支援事業)
第七十七条 市町村は、厚生労働省令で定めるところにより、地域生活支援事業として、次に掲げる事業を行うものとする。

 一 障害者等が障害福祉サービスその他のサービスを利用しつつ、その有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、地域の障害者等の福祉に関する各般の問題につき、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の厚生労働省令で定める便宜を供与するとともに、障害者等に対する虐待の防止及びその早期発見のための関係機関との連絡調整その他の障害者等の権利の擁護のために必要な援助を行う事業

 二 聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により当該障害者等とその他の者の意思疎通を仲介することをいう。)を行う者の派遣、日常生活上の便宜を図るための用具であって厚生労働大臣が定めるものの給付又は貸与その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業

 三 移動支援事業

 四 障害者等につき、地域活動支援センターその他の厚生労働省令で定める施設に通わせ、創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業

2 都道府県は、市町村の地域生活支援事業の実施体制の整備の状況その他の地域の実情を勘案して、関係市町村の意見を聴いて、当該市町村に代わって前項各号に掲げる事業の一部を行うことができる。

3 市町村は、第一項各号に掲げる事業のほか、現に住居を求めている障害者につき低額な料金で福祉ホームその他の施設において当該施設の居室その他の設備を利用させ、日常生活に必要な便宜を供与する事業その他の障害者等がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な事業を行うことができる。

(都道府県の地域生活支援事業)
第七十八条 都道府県は、厚生労働省令で定めるところにより、地域生活支援事業として、前条第一項第一号に掲げる事業のうち、特に専門性の高い相談支援事業その他の広域的な対応が必要な事業として厚生労働省令で定める事業を行うものとする。

2 都道府県は、前項に定めるもののほか、障害福祉サービス又は相談支援の質の向上のために障害福祉サービス若しくは相談支援を提供する者又はこれらの者に対し必要な指導を行う者を育成する事業その他障害者等がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な事業を行うことができる。
====================
●77条市町村の地域生活支援事業
 第1項
  第1号
  第2号
  第3号
  第4号
 第2項
 第3項
●78条都道府県の地域生活支援事業
 第1項
 第2項

 第77条第1項の第2号に「聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により当該障害者等とその他の者の意思疎通を仲介することをいう。)を行う者の派遣、日常生活上の便宜を図るための用具であって厚生労働大臣が定めるものの給付又は貸与その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業」と書いてあるわけですね。

 法律の条文は、こんな風に間に括弧書きがあって、ホント読みにくいわけです。国民に制度の中身を分からせないようにわざわざ難しく書いているんじゃないかと、僕はいつも感じるんですが、これによって世の中が動くんですから、やっぱ頑張って読まないといけないと思うのです。

 障害者自立支援法案上、手話通訳のことが書かれているのはたったこれだけです。そして、この第77条第1項は、「市町村は、厚生労働省令で定めるところにより、地域生活支援事業として、次に掲げる事業を行うものとする。」となっているわけですから、主語は「市町村」なんですね。「市町村は」「手話通訳等を行う者の派遣」を「行うものとする」と書いてあるわけです。

 ちょっと違和感ありませんか? 「行わなければならない」とはどこにも書いてないのです。ここは、やっぱり手話通訳派遣事業を全ての市町村に義務づける表現にして欲しいですよね。
 そうしたら「ここを『行わなければならない』と書き換えてくれ!」と声をあげないといけないわけです。
第77条は第1項に第1号から第4号まであって、その次に算用数字の2と3のところが第2項、第3項です。
●資料1
■現在の手話通訳事業の規定■  ちなみに、これまでの手話通訳事業の規定は、2000年(平成12年)6月に改正された社会福祉法(旧社会福祉事業法1951年(昭和26年)〜)に書かれています。
■第2条第3項に「次に掲げる事業を第二種社会福祉事業とする」として
第5号
「五 身体障害者福祉法に規定する身体障害者居宅介護等事業、身体障害者デイサービス事業、身体障害者短期入所事業、身体障害者相談支援事業、身体障害者生活訓練等事業又は手話通訳事業、同法に規定する身体障害者福祉センター、補装具製作施設、盲導犬訓練施設又は視聴覚障害者情報提供施設を経営する事業及び身体障害者の更生相談に応ずる事業」
と書かれていたわけです。
 2000年にようやく「手話通訳事業」が初めて社会福祉事業として法的に位置づけられたのですね。
●厚生労働省ホームページ「社会福祉法
■メモ■第一種社会福祉事業
国とか都道府県、市町村が直接運営するか、または社会福祉法人が運営するもので、施設で24時間生活している場合などが中心です。
■メモ■第二種社会福祉事業
在宅で生活している人が利用するサービスです。こちらは社会福祉事業であるけれど、NPOとか企業でも運営できるものです。
■メモ■「身体障害者福祉法」上の手話通訳の規定
(居宅事業)
第4条の2 第11項 この法律において、「手話通訳事業」とは、聴覚、言語機能又は音声機能の障害のため、音声言語により意思疎通を図ることに支障がある身体障害者(以下この項において「聴覚障害者等」という。)につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により聴覚障害者等とその他の者の意思疎通を仲介することをいう。第34条において同じ。)に関する便宜を供与する事業をいう。

(社会参加を促進する事業の実施)
第21条の4 地方公共団体は、視覚障害のある身体障害者及び聴覚障害のある身体障害者の意思疎通を支援する事業、身体障害者の盲導犬、介助犬又は聴導犬の使用を支援する事業、身体障害者のスポーツ活動への参加を促進する事業その他の身体障害者の社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進する事業を実施するよう努めなければならない。

(事業)
第26条の2 国及び都道府県以外の者は、社会福祉法の定めるところにより手話通訳事業を行うことができる。

(視聴覚障害者情報提供施設)
第34条 視聴覚障害者情報提供施設は、無料又は低額な料金で、点字刊行物、視覚障害者用の録音物、聴覚障害者用の録画物その他各種情報を記録した物であつて専ら視聴覚障害者が利用するものを製作し、若しくはこれらを視聴覚障害者の利用に供し、又は点訳(文字を点字に訳すことをいう。)若しくは手話通訳等を行う者の養成若しくは派遣その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する施設とする。
■法案全体の概要■  今日の学習会は「障害者自立支援法案」と手話通訳制度ということで、手話通訳に関係する部分を中心にお話しします。
 法案全体の解説は、とても私の手には負えないので、研究誌「手話通訳問題研究91号(2005.3月発行)」で「障害者福祉施策のあり方を考える」という特集を組んで、障害者自立支援法案について詳しく書いてありますので、是非じっくり読んで見てください。
 この研究誌の55ページに熊本の森本文子さんがこんな風に書かれています。
「率直な感想として、これだけの大きな改革である法案が、これほど短期間で閣議決定にまで至ったことに驚きました。法案に市町村の必須事業として『手話通訳等の派遣』が明記されたものの、実施に関する具体的なものは全て市町村任せというかなり乱暴な印象を受けました。特にこれまで派遣事業や設置事業をしてこなかった市町村は、聴覚障害者に対する情報提供について認識がゼロに等しいといえます。そんな市町村相手に聴覚障害者のニーズに沿った計画(制度)を作っていくように求めて行くには、私たち自身が十分な学習・検討をした上で意思統一していく必要がありますが、実施予定までにあまりにも時間がなく、またさらに私の地域では、合併の混乱と時期が重なり、まともに取り合うのかすら不安です。応益負担の問題も含め、危機感と焦りだけが湧いてきます。」
 もうホント、私の気持ちにぴったりでした。
●研究誌「手話通訳問題研究91号(2005.3月発行)」
2. 国会情勢
■2005.6.26時点での国会情勢■  さて、この「障害者自立支援法案」は現在国会で審議中ですので、分かる範囲で現在の国会の状況をお伝えしておきます。

 国会情勢なんていうと何か雲の上の話しのように感じられるかもしれませんが、国会は立法府、法律を作ったり修正したりするところですから、これは私たちの暮らしに一番大切なことを議論する場所なんですね。特に今回は「障害者自立支援法」案ということで、新しい法律を作ろうとしている訳ですから、私たち国民一人一人がもっと関心をもっていく必要がありますよね。今ではインターネットで国会や委員会のライブTV中継などもされていますし、ちょっと時間がかかりますが議事録も公開されていますから、是非一度「ネット見学」していただきたいと思います。

 国会本体の方は、郵政民営化法案の影響で会期が55日延長されましたね。障害者自立支援法案については、6月7日に衆議院の厚生労働委員会で審議されて以来再開されていないようですね。5月17日に全日本ろうあ連盟の安藤理事長が参考人意見を述べておられるので後で紹介したいと思います。
衆議院ホームページ
→「本会議・委員会等」
→「最近の委員会の動き」
→「厚生労働委員会」
→日付ごとの議事内容が読めます。
■メモ■第162回国会;平成17年1月21日(金)〜平成17年6月19日(日)・・・150日間+55日間延長で8月13日(土)まで
■国会審議の流れ■ 【国会審議の流れ】
 今回は、「障害者自立支援法」という法律を決めようとしているわけですが、法案というのは最初、衆議院の本会議で「趣旨説明」されたのち衆議院の委員会、今回は厚生労働委員会に「付託」されます。つまり、一から十まで国会で議論するわけにいかないので、専門の委員会で委員を中心に議論して、そこで採決されて、やっとこさ本会議に戻ってくるんですね。そしてさらに参議院に回されて同じように、厚生労働委員会が開かれて、採決されると参議院の本会議での質疑、討論、採決とそれぞれ2段階で進むわけです。
 でも、今回のこの「障害者自立支援法案」については、政省令に委ねた部分が大変多いということも問題になっています。
 つまり、法律でだいたいのことを決めておいて、後は厚生労働省で政令や省令でいかようにも勝手に決められる部分が多いということです。
 障害者の生活の根幹に関わる重要な法律がこんなことで良いのかと思う反面、具体的な政省令段階での攻防にはまだまだ戦いの余地(修正させる可能性)があるとも考えられます。
衆議院厚生労働委員会会議録のページ
衆議院審議中継
→「日本語」
→「今日の審議中継」あるいは「ビデオライブラリー」

■政令と省令の違い■ ■メモ■政令と省令の違い
 基本的には行政命令と言われるもので、大きな違いはありません。
 しかし、「法律」と「政令・省令」は大きな違いがあります。
 「法律」は、基本的に立法府が決めるもので、具体的には国会の衆議院、参議院両院の議決によって成立するものです。すなわち行政府の決めるものではないという意味では、全く違います。
 それに対して、政令と省令ですが、これはいずれも行政庁が決めるものです。ただ、「政令」は、内閣全体で決める命令です。 それに対して、「省令」は各省庁それぞれで決める命令です。
 すなわち「政令」は、手続的には、閣議を経て官報に掲載されていきます。それに対して、「省令」は各省庁の判断で、各省庁大臣の決裁で意思決定できるものです。
 もう一つ、「政令」は、各省庁の合意形成が必要であることと、法制的な見極めがかなり厳格になされるものです。
 それでは、先程の衆議院ホームページの議事録などから、審議経過を見てみましょう。
■衆議院厚生労働委員会審議経過■ ■メモ■
衆議院厚生労働委員会「障害者自立支援法案」関係審議経過
(1)4月26日(火)に厚生労働委員会に付託され、翌27日に尾辻厚生労働大臣から提案理由の説明から審議が始まりました。
(2)5月11日(水)と
(3)13日(金)に政府参考人への質疑があって、
(4)17日(火)に参考人として各障害者団体の関係者が意見を述べました。聴障関係では、財団法人全日本聾唖連盟理事長の安藤 豊喜さんが発言しています。
(5)18日(水)に政府参考人を交えた討論があり、
(6)19日(木)には「障害者の雇用の促進等に関する法律」関連の質疑が行われています。
(7)6月7日(火)に参考人質疑があり、ここまでで審議がストップしています。(6月8日(水)は社労士法、雇用促進法関係など)
厚生労働委員会自体は、10日(金)15日(水)にも別の議題で開会されています。

その後、民主党が6月8日に9項目の修正提案をして、水面下で調整が行われているらしい、という情報がネットに流れています。
この情報は6月20日の全難聴のブログサイトにも掲載されていました。
●全難聴((社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 )のブログサイト
■民主党修正提案■ ■メモ■2005年06月08日民主党修正提案
 当事者の声に真摯に応えるべく「障害者自立支援法案」修正協議へ

 横路孝弘『次の内閣』ネクスト厚生労働大臣は8日、厚生労働省内で記者会見し、同日行われた民主党『次の内閣』閣議を経て決定した「与党と修正協議を行う」とする「障害者自立支援法案」をめぐる民主党の対応を明らかにした。

 横路ネクスト厚労相は会見の冒頭、「民主党は基本的にはこの法案には反対」とする考えを表明。「本人の自己選択・自己決定、施設から地域へをキーワードに広がってきていたものが、この法案によって逆戻りする危険性がある」との懸念を示した。

 しかし、そうした見方があるにもかかわらず、修正協議を求める理由について横路ネクスト厚労相は、本法案が障害者の生活を直接左右するものであり、及ぼす影響は大きいとの観点から、障害者や家族および関係団体から、一歩でも二歩でも法案の改善をして欲しいとの悲痛とも言える要望が届けられたことに起因すると説明。そうした当事者の声に真摯応えていくことは政治の重大な責任との思いで、民主党は与党との政治レベル協議を行うこととした。同時に法案にとどまらず、障害者等の生活を実質的に左右する政省令事項等も与党と協議する。

 具体的には下記の9項目に関して、法案の修正、実質的な障害者福祉サービスの水準確保・向上を求め、それにより障害者等の生活維持、自立と社会参加の実現を目指す。

(1)法案の目的に障害者基本法の目的に明記されている「自立及び社会参加」を加える。

(2)定率負担の凍結・所得保障…利用者に負担を求めるにあたっては当事者のみの収入に着目することとした上で、障害者の所得保障制度の確立及び低所得者の負担軽減策の具体的な拡充が実現するまでの間、定率負担の導入を凍結する。

(3)移動の保障…地域生活支援事業における「移動支援事業」は据え置きつつ、個別給付の「重度訪問看護」「行動援護」の対象を拡大し、サービス受給者の範囲を実質的に現状水準に維持することにより障害者の社会参加を保障する。

(4)「自立支援医療」の凍結…公費負担医療を自立支援医療とする本年10月からの実施は凍結し、改めて医療を必要とする者の範囲、自己負担の在り方を検討する。

(5)重度障害者の長時間介護サービスの保障…国及び都道府県の障害福祉サービス費に係わる費用負担については障害程度区分の基準サービスに該当しない非定型・長時間サービス利用者の場合でも義務的経費の負担対象とする。

(6)住居支援サービスの水準確保…障害程度別にグループホーム・ケアホームへの入居の振り分けは行わないこと。またグループホームにおけるホームヘルパーの利用を可能とするなど、重度障害者の入居可能なサービス水準を確保する。

(7)本人の意見聴取…「障害程度区分の認定」「支給要否決定等」を行うにあたり、障害者等又は保護者の求めがある場合には、その意見を聴取することを義務づける。

(8)対象拡大及び障害定義の見直し…発達障害・難病等の者に対する本法の適用について、障害者等の福祉に関する他の法律に定める障害者の範囲の見直しと併せて速やかに検討し、必要な措置を講ずる。

(9)権利に係わる制度の確立…障害者の虐待防止に係わる制度、障害を理由とする差別禁止に係わる制度、成年後見制度その他障害者の権利擁護のための制度について、速やかに検討し、必要な措置を講ずる。
民主党ホームページ
■メモ■
 障害者自立支援法案について、民主党は与党との修正協議に入ることを6月8日決定したが、政府案に大幅な修正を求めているため、協議そのものが実現しない可能性も出ている。
 民主党の「ネクストキャビネット(次の内閣)」は、障害者自立支援法案の修正協議に応じることを決定し、与党側に対して修正事項を添えて申し入れた。しかし、所得保証の実現まで定率負担を凍結など、法案の基本部分を修正することを求めているため、与党は難色を示している。ネクストキャビネットの横山厚労相は「修正協議に応じるということは、法案が通ることを前提?」との質問に、「法案には基本的に反対なんです。きょうも反対であるということを確認して...」と語った。
 民主党は、修正協議に応じる一方で、法案に反対する姿勢を明確に示した。与党は、6月14日までに修正協議に入るか決定する方針。
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 国会情勢としては、7月6日くらいから厚生労働委員会での審議が再開するのではないかと言われていて、そっから7月13日までくらいがヤマ場なようです。 ●「やまのい和則の「軽老の国」から「敬老の国」へ
3. 「障害者自立支援法案」の何が問題か
■問題提起■  では、ようやく本題に入りたいと思います。

 今回の障害者自立支援法案に対して、聴覚障害者団体はどのような反対の声を挙げているのかを確認したいと思います。

 すでに皆さんご存じかもしれませんが、今回の障害者自立支援法案に対して「聴覚障害者「自立支援法案」対策中央本部」というのが設置されました。5月5日に決起集会が開かれ緊急アピールが採択されましたので、それをまず見てみましょう。
(1)1番目は、3の市町村に手話通訳派遣や要約筆記派遣のための予算を確保するように求めていることだと思います。
(2)2番目は、おなじ3の(2)で都道府県に対して、「養成」の責任を求めると共に広域対応や市町村からの委託(受け皿)として派遣事業所を設置するように要求しています。
(3)3つ目は、4の障害者計画への意見反映ですね。
(4)そして4番目が、応益負担への反対です。「全て無料」とすることと求めています。
(5)最後に障害程度区分を判定し支給決定を行うことになる「市町村審査会」にろう者の声を反映させることを求めています。
●資料5月13日朝日新聞
■メモ■
国の責任によるコミュニケーション保障の確立を求める緊急アピール
 −障害者自立支援法案の審議にあたって−

 2004年10月、厚生労働省は突然、「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」を発表しました。この内容は、障害者福祉施策の根本を抜本的につくりかえる重大な内容を含んだ提案であるにもかかわらず、国はわずか4ヶ月後の今年2月に「障害者自立支援法案」として国会に上程し、今年10月から実施に移そうとしています。

 法案は、障害の種類に関わらず福祉サービスを統合し、実施主体を市町村に一元化し、公費医療負担制度を含む障害者福祉施策を全般的に見直し、現在の施設や事業を再編するなど、多岐にわたる抜本改定の内容となっています。特に、「法案」には、これまで障害者施策で行われてきた「応能負担」を「応益負担」の仕組みへ転換するとともに、「食費等」を新たに自己負担とすることが盛り込まれており、所得保障の拡充がないままに、障害者に大幅な負担増を強いることになります。

 こうした重大な内容をもつ「法案」の策定を、障害者や関係者の意見を十分に反映しないまま推し進めるやり方に、多くの障害者団体から疑問や不安の声が上がっています。私たちは、国が一方的に「改革」を押しつけるのではなく、障害者や家族、関係者の願いを反映するより良い制度をめざして慎重な審議を行うよう、強く求めます。

 「法案」は枠組みだけが示されたもので、具体的なものは今後、政省令で示されることになっていますが、聴覚障害者福祉の関連では、「法案」の第2条第3項で「意思疎通について支援が必要な障害者等が障害福祉サービスを円滑に利用することができるよう必要な便宜を供与すること」と明記し、コミュニケーション保障を市町村の責務としています。また、同第77条では、手話通訳等の事業を市町村の基本事業とするなど、制度的な位置付けが明確になっています。

 しかし、手話通訳等の事業が組み込まれる「地域生活支援事業」は国や都道府県の補助金を受けて市町村が実施する仕組みとされています。そのため、国や都道府県・市町村の厳しい財政事情のなかで、手話通訳等の事業が安定的に運営される見通しがあるのかどうか懸念されます。また同事業は、実施体制や利用者負担金については市町村が決定することとなっており、「応益負担」の仕組みが導入される恐れもあります。

 それに、自立支援給付においては、サービスを利用する聴覚障害者に対するコミュニケーション支援が制度的に位置付けられていなく、相談・調整・支援やサービス提供場面でのコミュニケーション保障が不十分であるなどの課題が見られます。これは現行の支援費制度や介護保険制度の課題でもあり、ろう重複障害者などへの支援が円滑に行なえない恐れが十分にあります。

 言うまでもなく、人間が、自ら考えたことを表明し、他の人々と話し合い、協働作業を行う前提条件としてコミュニケーションは必要不可欠なものです。よって、コミュニケーションは基本的人権として保障されるべきであり、その支援については、その重要性を認識し、国の責任で財源確保を十分に行い、サービス水準の後退や市町村格差を生じさせないよう、私たちは下記の通り要望します。

          記


1.市町村・都道府県に聴覚障害者との相談など専門的な技能を有する手話通訳者等を配置し、障害者福祉サービスの適切な利用を促進するための方策を講じること。

2.聴覚障害者が地域の社会資源を自由に利用できるように各種方策を講ずること。

3.障害者福祉サービスなどの利用に係るコミュニケーション保障の基盤となる手話通訳事業及び要約筆記事業の拡充及び新規実施を図る こと。
 (1)市町村は、手話通訳派遣や要約筆記派遣のための予算拡充及び新規予算化を図ること。
 (2)都道府県は、手話通訳者及び要約筆記者の養成の責任を担うとともに、手話通訳派遣事業や要約筆記派遣事業の広域的対応や単独での実施ができない市町村の受け皿として、広域手話通訳等派遣事業所を設置すること。

4.障害福祉計画の策定にあたっては聴覚障害者の意見が十分反映される体制を保障すること。

5.コミュニケーション保障はあらゆる制度利用の根幹に係るものであり、利用者負担はなじまないため、地域生活支援事業における手話通訳や要約筆記の利用については全て無料とすること。

6.障害程度区分の判定及び支給決定における審査判定業務を行う市町村審査会の審査には聴覚障害関係者の意見を反映させること。

7.中途失聴・難聴者のニーズを反映した方策を講じること。

2005年5月5日
聴覚障害者「自立支援法案」対策中央本部決起集会 参加者一同
聴覚障害者「自立支援法案」対策中央本部ブログ
●資料「緊急アピール」
■メモ■地域生活支援事業の問題点
●ブログ「手話通訳者として、介護者として
4. 「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」
 石川さんはどんなお話しをされたかというと

 (1)障害者自立支援法案を理解するには、昨年10月12日に突如出てきた「グランドデザイン」を理解することが大切だ。なぜかというと、グランドデザインに、障害者自立支援法案を作ったベースとなる考え方がまとめられてるからだ、と言われました。

 (2)じゃ、障害者自立支援法案を理解する前に、「グランドデザイン案」を読まないといけないな、ということになって、前半は「グランドデザイン」の説明でした。
●「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)・・・社会保障審議会・障害者部会第18回資料より
■メモ■
「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」16.10.12厚生労働省障害保健福祉部

1.今後の障害保健福祉施策の基本的な視点

 1  障害保健福祉施策の総合化
 身体・知的・精神等と障害種別ごとに対応してきた障害者施策について、『市町村を中心に、年齢、障害種別、疾病を超えた一元的な体制を整備』する中で、創意と工夫により制度全体が効果的・効率的に運営される体系へと見直し、『地域福祉を実現』することが必要である。

 2  自立支援型システムへの転換
 障害者施策について、政策のレベルにおいて、保護等を中心とした仕組みから、『障害者のニーズと適性に応じた自立支援』を通じて地域での生活を促進する仕組みへと転換し、障害者による『自己実現・社会貢献』を図ることが重要である。また、これにより、地域の活性化など、地域再生の面でも役割を果たすこととなる。

 3  制度の持続可能性の確保
 現行の支援費制度や精神保健福祉制度は、既存の公的な保険制度と比較して制度を維持管理する仕組みが極めて脆弱であり、必要なサービスを確保し障害者の地域生活を支えるシステムとして定着させるため、国民全体の信頼を得られるよう『給付の重点化・公平化』や『制度の効率化・透明化』等を図る抜本的な見直しが不可欠である。


2.改革の基本的方向

 ●現行の制度的課題を解決する

 1 市町村を中心とするサービス提供体制の確立
  1) 福祉サービスの提供に関する事務の市町村移譲と国・都道府県による支援体制の確立
  2) 障害保健福祉サービスの計画的な整備手法の導入
  3) 各障害共通の効果的・効率的な事務執行体制の整備
  4) 障害等に対する国民の正しい理解を深める国の取り組み

 2 効果的・効率的なサービス利用の促進
  1) 市町村を基礎とした重層的な障害者相談支援体制の確立とケアマネジメント制度の導入
  2) 利用決定プロセスの透明化
  3) 障害程度に係る各サービス共通の尺度とサービスモデルの明確化
  4) 人材の確保と資質の向上

 3 公平な費用負担と配分の確保
  1) 福祉サービスに係る応益的な負担の導入
  2) 地域生活と均衡のとれた入所施設の負担の見直し
  3) 障害に係る公費負担医療の見直し
  4) 国・都道府県の補助制度の見直し

 ●新たな障害保健福祉施策体系を構築する

1 障害保健福祉サービス体系の再編
 1) 総合的な自立支援システムの構築
 2) 障害者の施設、事業体系や設置者、事業者要件の見直し
 3) 権利擁護の推進とサービスの質の向上
 4) 新たなサービス体系に適合した報酬体系の導入

2 ライフステージに応じたサービス提供
 1) 雇用施策と連携のとれたプログラムに基づく就労支援の実施
 2) 極めて重度の障害者に対するサービスの確保
 3) 障害児施設、事業のサービス体系の見直し

3 良質な精神医療の効率的な提供
 1) 精神病床の機能分化の促進と地域医療体制の整備
 2) 入院患者の適切な処遇の確保
 3) 精神医療の透明性の向上

介護保険との関係整理(別途整理)
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厚生労働省社会保障審議会障害者部会(第18回)の資料
 で、これだけ読んでもさっぱり分かりませんね。私もなかなか理解できませんでした。
 そこでもう少し角度を変えて、このグランドデザインについて調べてみたいと思います。
 それは、石川さんが薦めていた「障害保健福祉改革のグランドデザインは何を描くか(これからどうなる障害者福祉)」(かもがわ出版840円)という本に書かれていました。

【なぜグランドデザインが提案されたのか】
(1)一つは、障害者福祉に振り分ける財源の不足。要するにお金がないということです。支援費制度が2003年のスタートから2年連続で赤字になったもんですから、財務省に怒られて、@どれだけ使うのかサービス提供量の目標を示せとか、Aケアマネジメント制度を導入して勝手な支給決定が行われないようにしろとか、B応益負担を導入しろとか、考えたわけです。
(2)それからもう一つが、背景となる「社会福祉基礎構造改革」「三位一体改革」という項目が書かれています。

 はあ、次は「社会福祉基礎構造改革」がよく分かりませんね。「三位一体改革」も新聞やテレビではよく見かけますが、もっとキチンと理解する必要が出てくるわけです。
●「障害保健福祉改革のグランドデザインは何を描くか(これからどうなる障害者福祉)」(かもがわ出版840円)
5. 障害者福祉を巡る歴史的状況
6. 私たちは何をしていったらいいのか
7. おわりに

<参考;支援費制度における手話通訳事業の取り扱い>

(問6)支援費制度の対象となるサービス如何。小規模通所授産施設はどのように取り扱われるのか。また、手話通訳事業など現在予算措置によって実施されている事業はどうなるのか。

 支援費制度の対象となるサービスは、身体障害者、知的障害者、障害児福祉サービスのうち、現在措置制度によってサービス提供がなされているものであり、具体的には、次の頁の表の通りである。
 従って、小規模通所授産施設でのサービスや手話通訳事業などを含め、措置以外の仕組みによって提供されるサービスは、支援費制度には移行しない

  身体障害者福祉法 知的障害者福祉法 児童福祉法
(障害児関係のみ)











・身体障害者更生施設
・身体障害者療護施設
・身体障害者授産施設
(政令で定める施設に限る。)
・身体障害者居宅介護等事業
・身体障害者デイサービス事業
・身体障害者短期入所事業
・知的障害者更生施設
・知的障害者授産施設
(政令で定める施設に限る。)
・知的障害者通勤寮
・心身障害者福祉協会が設置する福祉施設
・知的障害者居宅介護等事業
・知的障害者デイサービスセンター
・知的障害者デイサービス事業
・知的障害者短期入所事業
・知的障害者地域生活援助事業
・児童居宅介護等事業
・児童デイサービス事業
・児童短期入所事業












・身体障害者福祉ホーム
・身体障害者相談支援事業
・身体障害者生活訓練等事業
手話通訳事業
・補装具製作施設
・盲導犬訓練施設
・視聴覚障害者情報提供施設
・身体障害者の更生相談に応じる事業
・日常生活用具給付事業
・補装具給付事業
・更生医療・育成医療
・知的障害者福祉ホーム
・知的障害者相談支援事業
・知的障害者の更生相談に応じる事業
・日常生活用具給付事業
・知的障害児施設
・知的障害児通園施設
・盲ろうあ児施設
・肢体不自由児施設
・重症心身障害児施設
・障害児相談支援事業
・児童の福祉の増進について相談に応じる事業
・日常生活用具給付事業

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